2020 Fiscal Year Research-status Report
心理療法過程におけるアタッチメント方略の変化に関するDMM-AAIによる検証
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19K03335
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
三上 謙一 北海道教育大学, 保健管理センター, 准教授 (90410399)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アタッチメント / AAI / DMM / 心理療法過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年7月に思春期青年期精神医学雑誌に「Crittendenの「アタッチメントと適応の動的―成熟モデル(DMM)」による成人アタッチメント研究の展望Ⅱ-実証研究、事例研究、および司法場面への応用について-」という文献研究を発表した。本論文では研究課題であるDMM-AAIと心理療法過程との対応について検討するために、DMM-AAIを用いた実証研究、事例研究および司法場面での応用について考察した。その結果、DMMはこれまで日本で導入されきたアタッチメントのいわゆるABC+Dモデルに比べ、臨床群を理解するためのより複雑な理論的枠組みを備えており、実証研究では健常群と臨床群をより正確に区別できる可能性が示唆された。また事例研究においても発達障害や犯罪加害者などの理解を拡大する可能性があると思われた。さらに虐待の問題に対しても家庭裁判所アタッチメントプロトコルを提唱するなど、現在の日本の課題にも密接に関連しているものと思われた。 しかし、従来のABC+Dモデルに比べるとDMMは圧倒的にエビデンスが少ないため、その主張を特により大規模なサンプルを用いて、理想的にはABC+D側の研究者も参加する形で慎重に検証していく必要があると思われた。さらにDMM-AAIの訓練は、現在は英語で受講するしかないが、英語と日本語との間の言語によるギャップも無視できないものがあると思われた。日本で研究や臨床に応用していくためには、日本人の信頼性のあるコーダーを養成し、日本語のデータを蓄積した上で、日本人コーダーの間でDMM-AAIの分類結果について検討し合えるようになる必要があると思われた。 このような文献研究の結果を踏まえた上で、少数のサンプルであっても、DMM-AAIを日本語で実施して、その分析結果を心理療法に適用していくことには意義があると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のために、従来のように海外の講習会に参加したり、研究協力者を募ってインタビューを実施することが難しかった。しかし、AAIの青年期版である成人移行期アタッチメント・インタビュー(Transition to Adulthood Attachment Interview: TAAI)のオンライン講習会に参加することができた。これによって20歳前後の青年期の大学生に対してTAAIを実施して、その結果を心理療法の結果と対応させる研究の準備が整ったことには意義があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずTAAIとAAIの訓練を続けていくことが必要であると考えている。海外出張は難しいと思われるが、オンライン講習会などを柔軟に利用していきたい。次にTAAIを適用可能なクライエントに対してTAAIを実施して、データを集めたい。TAAIの分析は海外の研究者に依頼して分類をしてもらい、その結果を心理療法の過程と結果に対応させていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために海外出張して講習会を受けることができなかった。このため旅費が予定使用額よりも実質ゼロになったため。次年度も海外出張は難しいと思われるが、その分オンライン講習会やデータの逐語記録作成費にまわしたいと考えている。
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