2023 Fiscal Year Annual Research Report
心理療法過程におけるアタッチメント方略の変化に関するDMM-AAIによる検証
Project/Area Number |
19K03335
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
三上 謙一 北海道教育大学, 保健管理センター, 教授 (90410399)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カウンセリング / アタッチメント / TAAI / 変化のプロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
父親の喪失をきっかけに抑うつ状態になって来談した大学生に対して成人移行期アタッチメント・インタビュー(TAAI)を実施し、カウンセリングにおける変化のプロセスとの関連を検討した。従来の成人のアタッチメントをアセスメントするインタビューであるアダルト・アタッチメント・インタビュー(AAI)が26歳以上を対象としているのに対して、TAAIは25歳以下の若者に適用できるように、AAIの内容を若干修正したものである。TAAIの結果は録音した上で、言い淀みも含めてできるだけ正確に逐語記録として書き起こした。その上で英訳を作り、TAAIの分析に関して信頼性のあるアメリカ人のコーダーに分析を依頼した。その結果、このクライエントのTAAIの分類は、RtC (Dp Ul(ds)F A4 → B) であった。まずRtCとはReadiness to consider changeの略であり、このクライエントの精神状態が「変化への準備を考慮している」状態であることを意味している。これはインタビュアーが同時に彼のカウンセラーでもあったことが影響していると考えられる。父親の喪失による抑うつ状態から変化しようという彼の動機付けをよく捉えていると思われる。ではどのように変化するかというとA4(強迫的従順)方略からB(安定型)方略へと向かっていることが示唆されている。次にDpとは抑うつ状態を意味しており、カウンセリングを始めた当初の彼が抑うつ的であったことを示唆する。さらにUl(ds)Fとは父親の喪失を軽視する形式での「未解決の喪失」状態にあることを示している。これは父親が亡くなった際に彼が涙を見せることなく、喪失を正に「軽視」したまま未解決であったことをよく表わしている。このようにTAAIはクライエントの心理状態を的確に反映しており、カウンセリングの変化のプロセスを検討する上で有用であると思われた。
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