2019 Fiscal Year Research-status Report
確率空間上の保測変換族に対する多重同時再帰性の定量的研究
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19K03558
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平山 至大 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50452735)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多重同時再帰性 / エルゴード理論的結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
エルゴード理論や力学系理論において,もっとも基本的かつ重要な性質の一つに再帰性がある.例えば,確率空間上の保測変換に対するPoincare再帰定理は,任意の可測集合について,そのほとんど全ての点は変換の反復合成作用のもと,その集合に無限回戻ることを主張する.更に確率空間が距離を許容する場合には,その初期点の任意近くに無限回戻ることも主張される.これらの主張は可換な保測変換族が作用する場合の多重同時再帰性へと拡張され確立されており,現在も更なる拡張や他分野との関連などが活発に研究されている.本研究では,多重同時再帰性を定量的観点から行うことを目的としている. 本年度はまず,多重同時再帰性の定量的評価を行う準備として,上述した距離型Poincare再帰定理を,確率空間上の排反な保測変換族に対し確立した.ここに排反性は可換性と独立な性質である.またこの議論の副産物として,多重エルゴード平均の二乗平均収束を導いた.この収束は可換な保測変換族に対しては知られていたが,本研究の成果により(可換と限らない)排反な保測変換族に対しても拡張されたことになる.さらに,可換な保測変換族の場合には一般に極限が明示的に表示できないのに対し,排反な保測変換族の場合には極限が明示的に表示できることも明らかにした.以上は一般論に関わる研究である. 他方,いくつかの具体的な保測変換族について同時再帰時間の計算を進めた.その結果,再帰時間(の平均)の挙動に顕著な相違を見つけた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般論に関する定量的評価そのものについての成果はないが,下準備となる主張を示すことはできた.またその議論から,いくつかの予期していなかった主張を示すことができた.具体例の計算から興味深い現象を見つけることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
具体例で見つかった定量的相違点が生ずる原因を探究する. 一般論の展開においては,エルゴード理論的結合の手法を用いた拡大構成を利用すべく,まずは当該の手法について知見を深めたい.
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Research Products
(5 results)