2021 Fiscal Year Research-status Report
軌道の存在確率密度をもつ力学系の大域挙動に関する研究
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19K03585
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鷲見 直哉 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (50301411)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 解析学 / 力学系 / エルゴード理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,軌道同士の振舞いに関するある局所的な条件から,軌道の存在確率密度に関する次の大域的な性質(1)と(2)を導くことである:(1)すべての軌道の存在確率密度が決まるならば,この存在確率密度が一意的に決まる.(2)有限時間での軌道の存在確率密度と,無限に時間が経過した軌道の存在確率密度との差は,エントロピーとポテンシャルという2つの値を用いて具体的に表示できる.特に本研究では,互いに異なる軌道の組に対して,一方の軌道の近くから他方の軌道の近くに移動する別の軌道がある,という局所的条件のみから上の性質(1)と(2)を導くことを目的とする. 更に,本研究の応用として,次の結果(3)を導く:(3)稠密な軌道をもつ可微分力学系が,摂動を加えてもその性質を失わないならば,性質(1)と(2)を満たす. 最近(3)に関連して,Cheng-Gan-Shi らによって,C1 級で微小な摂動を加えてもその性質を失わないが,上記の局所的な条件を満たさないような例が構成された.実際に,この例では軌道の存在確率密度に対して一意性が成り立たない.そのため,研究目標 (3) を変更する必要が出てきた. 一方,Burns-Herts-Herts-Talitskaya-Ures の結果より,このような例はかなり「稀な」例であることがわかっている.そこで,次の新しい目標 (4) を設定した:(4) 稠密な軌道をもつ可微分力学系が,C1 級の摂動を加えてもその性質を失わないならば, ジェネリックな摂動を加えることにより,上記の局所的な条件を満たし,性質 (1) と (2) を満たすようにできる.更に,存在確率密度が決まるならば,統計的安定性を持つ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究では,結果(3)が成り立たないことがわかり、目標を変更さざるを得なかったため.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べた局所的条件から,大域的性質(1)と(2)を導くことを次年度の目標とする.(1)については,全ての周期点の組みに対して、その安定集合と不安定集合が位相的横断的な交点をもつ力学系に対して,存在確率密度の一意性を示す.(2)については,強横断性を満たす公理A力学系に対して,有限時間での軌道の存在 確率密度と,無限に時間が経過した軌道の存在確率密度との差を評価する.
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Causes of Carryover |
令和3年度に計画されていたほとんどの研究集会が新型コロナウィルスの影響で延期になり、また計画されていた出張も延期せざるを得なくなったため、次年度使用額が生じてしまった。新型コロナウィルスが収束したのち、昨年度延期された各研究集会並びに出張を行う予定である。
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