2022 Fiscal Year Research-status Report
組合わせ的離散構造に対する量子ウォークの共鳴現象による逆問題的アプローチ
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19K03616
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
瀬川 悦生 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (30634547)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子ウォーク / 定常状態 / 行列木定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
定常状態に収束する量子ウォーク模型を構築した。特に、Grover walkにおける定常状態の特徴づけや、幾つかの場合における、定常状態に収束する、量子ウォーク版の混合時間の見積もりの証明を与えた。より具体的には、(1) Grover walkの拡張版であるSegedy walkにおいては、一定入力の場合、その定常状態は背後にある可逆ランダムウォークで誘導される電気回路における電流と、そのランダムウォークの定常測度の線形和で書き表されることを証明した。(2)定常状態における外部と内部グラフへの流出入の様子を表す散乱行列を明示的に与え、局所的な時間発展のダイナミクスがそのまま大域的な散乱に反映することを示し、内側のグラフの空間構造に依存せず、外部と接するグラフの表面にのみに依存することを証明した。(3) 一定入力と交代入力の場合、定常状態における内部グラフに蓄積するエネルギー(=量子ウォークの快適度)を提案し、与えられたグラフの量子ウォークで特徴づけられたある共通の性質をもつ部分フラフの属の個数を数え上げることにより、求められることを証明し、量子ウォークから動機づけられるグラフの特徴量を与えることができた。(4) グラフを有限パスに特化した場合の、定常状態の相対確率の極限定理を与えた。(5)定常状態に収束する量子探索アルゴリズムの提案をし、完全グラフの場合の収束速度と、瞬間的最大発見確率になる時刻の見積もりを導出した。(6) 光学偏光素子を用いた、この量子ウォークの実装法のデザインを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第1ステップである定常状態に収束するモデルの構築は、量子ウォークの共鳴性を利用した、外部からの流出入を伴うものを考察することで、達成された。そして、第2ステップでは、Grover walkにおける定常状態の特徴づけも、一定、もしくは、交代入力の場合については、電気回路とその背後にあるランダムウォークの定常測度を用いて、表されるという意味では、限定的ではあるが決着がついた。また、第3ステップにおいて、定常状態に収束する量子探索モデルの考案をし、完全グラフにおける、定常状態への収束のスピードと、マークされた頂点の瞬間最大発見確率を見積もることで、発見確率が最大になるO(N^(1/2))時刻を逃しても、定常状態でも十分大きな発見確率が得られる、保証付きの量子探索アルゴリズムを提案することができた。第4ステップにおいては、この二つの入力に対して、内部グラフに蓄積されたエネルギーが、様々なところで現れるグラフの全域木の数え上げだけではなく、サイクルとして奇サイクルを一つだけもつような全域部分グラフの数え上げにより、計算ができることも示すことで、グラフ理論との繋がりを与えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの成果は、外部からの一定入力か交代入力で行われてきたが、より一般の振動を与えた場合について考察する。特に、内部グラフに蓄積するエネルギーに関する、グラフのハッセ図を描画することができる。すると、頂点数が同じあるグラフのクラスにおいて、 一定入力(θ=0)で最上位だったものが、交代入力(θ=π)で最下位に陥落することがわかっている。そこで、この振動数をθを0からπまで連続的に動かすことにより、どのようにこのハッセ図が変化していくかについて、考える。このことにより、量子ウォークによって誘導されるより豊かなグラフの内部構造が抽出されることが期待される。特徴的な散乱の様子や量子探索を有効にするグラフの内部構造をあぶりだすことにより、これらの性質を保存するような、グラフの縮約を考案することにより、逆に与えられた量子ウォークの性質を実現するようなグラフの構築ができるように研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、海外に出張がいかれなくなったために、思うように助成金を消費することができなかった。今年度は、海外の共同研究者のところに滞在し、これまでに滞っていた共同研究を活性化するとともに、さらに、国際会議で研究成果を発表する。
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Research Products
(23 results)