2019 Fiscal Year Research-status Report
時間反転対称性を破るカイラル超伝導体の輸送現象および端状態の研究
Project/Area Number |
19K03724
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
今井 剛樹 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (10396666)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トポロジカル超伝導体 / 時間反転対称性の破れた超伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
時間反転対称性の破れたカイラル超伝導体は,試料端・表面近傍にゼロ磁場下で自発的に電荷流を流し,またバルクの波動関数がトポロジカルに非自明な構造をもつトポロジカル超伝導体の有力候補になるものとして大きな関心を集めている。実験・理論とのクロスチェックが必須であり,理論側からのその候補と見なされてる物質に対する詳細な概念の提供ならびに新規物質開発に関わる提案ならびに支援を行うことは極めて重要である。 そこで時間反転対称性の破れたカイラル型超伝導体の候補として考えられている複数の物質に対して,超伝導秩序変数ならびにトポロジカルな性質の物理量への顕在化について理論的立場からの解析を遂行した。超伝導相での各種物理量における伸張圧縮効果や温度変化などを微視的および現象論的解析手法などを活用して評価・見積もりを行い,超伝導秩序変数ならびに実験結果との対応関係を明示することにより,対波動関数の同定などに関する物性評価への指針を提示している。得られた結果の一部を学術論文,ならびに国際会議およびその会議プロシーディングスとしてすでに報告している。 さらに新奇な超伝導状態および磁性状態などを示す物質群の定量的評価・物質探索を第一原理計算手法を利用して行っており,得られた成果の一部のうち,遷移金属酸化物に対する伸張圧縮効果と磁気秩序状態との関わり合いについて,国際会議およびその会議プロシーディングスなどで公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年4月の研究開始後,研究に必要な資材として,複数台のコンピュータを導入してクラスター計算機環境の構築を行っている。特に第一原理計算手法による大規模な解析に対し大きな威力を発揮しつつある。 まず当初の研究計画であるSr2RuO4を念頭に置いた伸張圧縮効果の研究については,第一原理計算手法により低エネルギー電子状態を調べ,有効模型を構築した。その有効模型を用いて超伝導状態におけるトポロジカルな性質を議論した。そこでは秩序変数に対する圧力効果が,超伝導状態の秩序変数にどのように反映されるかを議論し,対応する端状態を求めた。さらに可能な観測量としての端電流および熱ホール伝導度などに対し,圧力効果と秩序変数の関わり合いを議論して実験結果との対応関係を示すことにより,対波動関数の同定などに関する物性評価の指針を提示した。その詳細を学術論文として報告している。ただし研究期間の開始後に,候補となる物質に対し従来の概念と異なる実験結果が報告されたため,当該物質に対しては慎重に研究を遂行している。さらに候補物質の一つであるSrPtAsについても核磁気共鳴実験などによる結果と超伝導状態の秩序変数との対応関係について議論を行うなど,時間反転対称性を破るカイラル型超伝導体の複数の候補に対し,類似性・多様性を微視的観点から議論を進めている。 並行して研究計画のうちの新奇な超伝導および磁性を示す物質群の探索を行い,新規材料としての探索を動機付けに遷移金属酸化物に対する第一原理計算による解析を行い,伸張圧縮に対する磁気秩序状態の変化を明らかにし,国際会議などで報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き時間反転対称性を破るカイラル型超伝導体の普遍的性質を明確にすることを念頭に,観測可能な物理量などに対して,理論側から微視的観点からのアプローチを行う。 具体的には研究計画の予定にある結晶構造の対称性やクーパー対のスピンの大きさなどをよる違いに注目して不純物・格子欠陥効果の研究を遂行する予定である。束縛状態の解析を通して超伝導状態の理解を深めていく予定である。これは当初申請した研究内容の複数のトポロジカル超伝導候補物質の対応関係に対する研究に該当するものである。さらにトポロジカル超伝導体および絶縁体に対する熱電効果についても今後研究を進めていく。特にトポロジカルな性質を反映したエッジ状態を利用しての熱伝導度の制御などに対するの詳細な理解を試みる。さらに遷移金属酸化物を念頭に新規超伝導体・磁性体の探索についても第一原理計算手法などを用いて引き続き遂行し,定量的な物性評価を試み,新規物質の物性評価を行う予定である。 またより一層の大規模な数値計算を伴う場合も想定されるため、その必要に応じ計算機環境も更新を図ることを想定している。
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Causes of Carryover |
2020年3月に開催の日本物理学会年会等の参加費を計上していたが、新型コロナウイルスの影響により開催中止となったため、その分が繰り越し金となっている。
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Research Products
(7 results)