2020 Fiscal Year Research-status Report
中性子とX線回折法による水素結合型有機誘電物質の圧力誘起強誘電性の解明
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19K03728
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
Principal Investigator |
中尾 朗子 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 副主任研究員 (90392050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宗像 孝司 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 副主任技師 (00363408)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中性子回折 / 圧力誘起強誘電体 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019~2020年度は,圧力誘起強誘電体[dppz][H2fa]において,実空間と強く結びついている誘電応答の起源を解明するために,中性子散乱を用いた高圧セルの評価を行い,高圧・低温試料環境下での構造解析の構築を目指すとともに中性子構造解析による精密な構造パラメータの抽出を図っている。本研究対象の分子性結晶は対称性が低く格子定数が大きいため,精度の高い結晶構造解析を行うためには,広い逆格子空間に渡って信頼性の高いかつ十分な数の反射強度データを得ることが重要である。しかしながら,高圧試料環境下での中性子回折実験では,測定領域の制約やセル材質からの散乱によって一般的なデータ処理では,精度ある反射強度の検出が困難であった。そのため,2020年度は,適切な反射強度補正を施し積分強度反射の精査を実施し,データの向上を行った。常誘電相のデータでは,等価反射をマージすることである程度の解析データの精度の向上が見られたが,反転対称のない空間群を持つ強誘電相の精密化では,独立パラメータの増加に伴って顕著な収束率の悪化が確認された。特に弱いシグナルの信頼性が不十分であることから,セルの吸収補正や結晶の吸収補正を行うことにより,積分強度データの向上を図った。結晶の吸収補正では結晶のミラー指数を決定しビーム行路から計算された吸収係数によるデータ補正を確立することで,特に長波長で観測された反射が改善されることを確かめた。さらなる構造パラメータの精査を行い,物性発現の議論へ繋げる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MLF・SENJUで測定したデータ改善のために吸収補正の確立を行い,学術雑誌にて発表した。この手法により構造解析データの向上が見られた。一方,予備測定による試料環境整備の最適化が予定通り進んでいない。また,中性子回折装置の幾何学的制約による逆格子空間の異方性が解析結果に影響を及ぼすことが分かった。このため異なる結晶方位のデータを必要とする可能性がでてきた。研究計画全体では,研究に欠かせない中性子回折実験に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで同様に計画どおりに研究を推進していく予定だが,試料環境の整備を行い,[dppz][H2fa]において分極起源の解明に繋がる精密な構造パラメータを得ることで,高圧・低温下での中性子単結晶構造解析の手法の確立を進める。さらに,塩基の異なる類似物質における圧力依存性の系統的な研究へ展開する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,国際会議等の延期や学会のオンライン化によって予定していた旅費等が削減されたため,また,研究実施に必要な高圧・低温試料環境に必要な機器の購入にあたり,現存の機器を評価し仕様の最適化を図る予定でいたが,評価・検討に必要十分な測定が実施できなかったため。 (使用計画) 翌年度分として請求した助成金と合わせて,2021年度に,研究に必要な実験試料環境の整備のための装置機器等を購入する予定である。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] q=0 long-range magnetic order in centennialite CaCu3(OD)6Cl2・0.6D2O: A spin-1/2 perfect kagome antiferromagnet with J1-J2-Jd;2020
Author(s)
K. Iida, H. K. Yoshida, A. Nakao, H. O. Jeschke, Y. Iqbal, K. Nakajima, S. Ohira-Kawamura, K. Munakata, Y. Inamura, N. Murai, M. Ishikado, R. Kumai, T. Okada, M. Oda, K. Kakurai, and M. Matsuda
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Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 101
Pages: 220408
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Flux Growth and Magnetic Properties of Helimagnetic Hexagonal Ferrite Ba(Fe1-xScx)12O19 Single Crystals2020
Author(s)
Shigenori Utsumi, Seiya Tanaka, Kenichi Maruyama, Nao Hatakeyama, Kenichi Itoh, Jun Koike, Akihiro Horikawa, Hiroki Iriyama, Hajime Kanamaru, Yasushi Amako, Taku Iiyama, Ryusuke Futamura, Ryoji Kiyanagi, Akiko Nakao, Kentaro Moriyama, Yoshihisa Ishikawa, and Nobuyuki Momozawa
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Journal Title
ACS Omega
Volume: 5(38)
Pages: 24890-24897
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] μSR and Neutron Scattering Studied on Possible Partially-Disordered Magnetic State Coexisting with Heavy Quasiparticles in SmPt2Si22020
Author(s)
Naoki Nakamura, Ryuji Higashinaka, Kengo Fushiya, Ryo Tsubota, Takashi U. Ito, Wataru Higemoto, Akiko Nakao, Ryoji Kiyanagi, Takashi Ohhara, Koji Kaneko, Tatsuma D. Matsuda, and Yuji Aoki
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Journal Title
JPS Conf. Proc.
Volume: 29
Pages: 012009
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Successive Phase Transitions in R3Ir4Sn13 (R: La and Ce) Investigated Using Neutron and X-ray Diffraction2020
Author(s)
Seiya Nakazato, Kazuaki Iwasa, Daisuke Hashimoto, Mami Shiozawa, Keitaro Kuwahara, Hironori Nakao, Hajime Sagayama, Motoyuki Ishikado, Takashi Ohhara, Akiko Nakao, Koji Munakata, and Ryoji Kiyanagi
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Journal Title
JPS Conf. Proc.
Volume: 30
Pages: 011128
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Multi-Step Magnetic Transitions in EuNiIn42020
Author(s)
Shugo Ikeda, Koji Kaneko, Yuki Tanaka, Takuro Kawasaki, Takayasu Hanashima, Koji Munakata, Akiko Nakao, Ryoji Kiyanagi, Takashi Ohhara, Kenji Mochizuki, Akihiro Kondo, Koichi Kindo, Yoshiya Homma, Matthias D. Frontzek, Hisao Kobayashi
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn.
Volume: 89
Pages: 014707
DOI
Peer Reviewed