2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K03928
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 耕司 京都大学, 理学研究科, 教授 (50221825)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 銀河 / 星形成 / 銀河進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
棒渦巻銀河 NGC1300 における巨大分子雲の CO(2-1)/CO(1-0)輝線比(R21)を、腕部・棒部・棒端部の3つの環境で違いがあるかを調べた。各部分が空間的に混ざらないように空間分解能に注意して測定した。その結果、環境によってR21は有意に異なり、温度換算で考えると棒部がもっとも低く、次に腕部、そして棒端部の順に温度が高くなることが明らかになった。これは、棒部でHII領域がなく、分子ガスの温度が低いためと考えられる。 これまで、強い棒構造を示し棒部で星形成のみられないNGC1300を主たる対象としてケーススタディ的に研究を進めてきたが、更に多くの棒渦巻銀河を対象として、棒部で星形成効率(SFE)が小さい傾向にあるのか統計的な研究を行った。また、棒の各種性質との相関を調べた。先行研究の問題点であった、角分解能の悪さや領域の不適切な設定を改善して調査した。その結果、棒部でのSFEはKennicutt-Schmidt law から予想される値に比べて0.63(+0.22-0.37)倍となっており、棒部では通常の円盤部でのSFEより有意に系統的に小さいことが明らかになった。 さらに、SFE抑制の度合いと、棒の各種性質との関係を詳しく調べた。棒の強さの指標になりそうな量との相関は見られなかったが、CO 輝線の速度幅が大きいとSFEが小さいという相関関係がみられることがわかった。この結果は、速度場のshearの強さあるいは分子雲の衝突速度の違いが星形成を制御していることを示唆していると考えられる。 その他、分子雲衝突による星形成抑制が宇宙初期で起こっていたかどうかという観点から、宇宙初期の銀河における星形成の性質につても研究を進め、従来一般的に知られているより星形成が活発であった可能性があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、強い棒構造を示し棒部で星形成のみられないNGC1300を主たる対象としてケーススタディ的に研究を進めてきたが、これをより多くの棒渦巻銀河を対象に展開できた。特に、棒部での星形成効率が低い銀河では、CO輝線の速度幅が大きい傾向にあることを見出し、分子雲の高速衝突が原因であることを示唆する結果を得た。このように、統計的研究を推進し、一定の結果を得たことから、概ね順調に進展と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように棒部での星形成効率が低い銀河では、CO輝線の速度幅が大きい傾向にあることを見出し、分子雲の高速衝突が原因であることを示唆する結果を得た。ただし、この点は、間接的な証拠であるため、今後の研究課題となる。個別の銀河で分子雲を同定し、その位置と速度構造を解析することで、より直接的に衝突状態を解明すべく観測を計画中である。
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Causes of Carryover |
上記のように、継続して研究するべき課題が出てきたため。データ保存用等の物品費、研究打合・発表等の旅費、出版費として使用予定。
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