2020 Fiscal Year Research-status Report
マルチクロックトレーサーを用いた成層圏大気年齢の観測
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19K03963
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
菅原 敏 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (80282151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 真司 東北大学, 理学研究科, 教授 (30270424)
石戸谷 重之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究グループ長 (70374907)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 成層圏大気年代 / 重力分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年7月25日に、成層圏大気の採取を目的とした気球実験を北海道大樹町において実施した。液体ヘリウムを使用したクライオジェニックエアサンプラーを飛揚し、高度15kmから35kmの間の異なる11高度において、上昇中に10本、最高高度でのレベルフライト中に1本の空気採取を実施し、予定した全ての高度での空気採集に成功した。採取された空気の量は、最も少ないもので高度33km付近における10L(STP)、最も多いものでは高度23km付近における28L(STP)であり、各種の大気年代トレーサーとそれらの関連気体の濃度・同位体の解析が可能となった。試料空気の分析は、大きく3つのカテゴリ、すなわち(1)温室効果気体と関連成分、(2)ハロカーボン類、(3)大気主成分と希ガスであり、分析項目は合計約40項目と大幅に拡充された。このうち、ハロカーボンと一部の同位体を除いた分析が終了した。特に、理想的なクロックトレーサーとして利用可能なCO2、SF6、CO2のd13C、O2/N2についての分析を終え、その結果から平均年代を推定することが可能となった。また、d13CとO2/N2から正確な大気年代を推定するためには、それらの重力分離効果を明らかにする必要があり、そのための大気主成分同位体分析や希ガス分析の結果をもとに重力分離のモデル計算による理論研究を進めた。2次元大気モデルにArとN2の分子拡散を組み込み、成層圏の平均子午面循環の盛衰を仮定したシミュレーションを繰り返した結果、成層圏の循環が強化される時には、平均年代が小さくなるとともに成層圏の重力分離も小さくなり、その結果、対流圏におけるわずかな重力分離も小さくなることがわかった。このことから、対流圏におけるAr/N2比の長期的な変動に対して、成層圏における重力分離が重要であること示し、その成果を国際雑誌に研究論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の当初計画では初年度の2019年度に大気球を用いた成層圏大気採取実験を実施する予定であったが、世界的なヘリウムガス枯渇の影響により実験は今年度へ延期となっていた。実験の実施が1年程度遅れたことにより、全体の計画がやや遅れていることはやむを得ないが、今年度は予定どおりに実験を実施することができ、採取された成層圏大気試料の分析も順調に進んでいる。昨年度の実験が延期になったことで、数値モデルを用いた重力分離の理論的研究を先行して進めた結果、Ar/N2比に関する新しい知見が得られるに至り、成果の論文発表ができた。また、Ar/N2比の最新研究により、その重力分離と平均年代との間によい相関関係が見られることから、Ar/N2比を用いることでも年代の推定が可能であることがわかったため、当初計画のクロックトレーサーに加えて、Ar/N2比をageトレーサーとして加えることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の分析項目の中で、クロックトレーサーとして重要と考えられているCO2、SF6、CO2のd13C、O2/N2についての分析は完了しているが、測定機器の調整と前準備のためにハロカーボン類の分析がまだ完了しておらず、2021年度の前半までの完了を目指す。さらに、最新の研究により年代推定に利用できることがわかったAr/N2比も加え、それぞれの成分から独立に大気年代の推定を行う。観測によって年代推定を行う上で、年代スペクトルが未知であることが大きな課題である。特に、年代スペクトルを一定の仮定のもとで与える必要があるが、それによる平均年代の不確定さの評価が重要となる。そこで、本研究ではマルチクロックトレーサーの特徴を生かし、同じ年代スペクトルを仮定した場合に成分によってどれだけ平均年代が異なるか、さらに、様々な異なる年代スペクトルを仮定し、同一成分での平均年代がどれだけ異なるかを詳細に調べる。
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Causes of Carryover |
当初計画では初年度に予定されていた北海道での気球実験が、世界的なヘリウム枯渇問題によって延期され、当該年度に実施することになった。本研究では気球実験の実施に必要な経費が占める割合が多いため、当初計画では初年度に予算額の比率が偏っており、交付決定額の比率も概ねその計画に沿ったものである。したがって、実験計画の実施の遅れが、ガス分析に必要な消耗品等の執行の遅延に影響しており、結果として、次年度への繰越金となっている。さらに、COVID-19の影響により、予定していた国内の出張旅費の執行がキャンセルされたことも次年度使用額が生じた理由の一因となっている。次年度には、当該年度にキャンセルされた国内旅費に加え、成果の発表として海外旅費の執行を予定しているため、遅延しているものの次年度に遅らせて計画通りに執行する予定である。また、気球実験実施の遅延によって、サンプル分析の一部も遅延しており、これに必要なガス類、継手部品などの消耗品費についても次年度実施のために執行する計画である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] マルチクロックトレーサーによる大気年代推定(B20-04結果速報)2020
Author(s)
菅原 敏,青木 周司,森本 真司,本田 秀之,豊田 栄,石戸谷 重之,後藤 大輔,梅澤 拓,長谷部 文雄,石島 健太郎,飯嶋 一征,吉田 哲也
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Journal Title
大気球シンポジウム: 2020年度
Volume: 2020-11
Pages: isas20-sbs-015
Open Access
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[Presentation] マルチクロックトレーサーによる大気年代推定(B20-04結果速報)2020
Author(s)
菅原 敏,青木 周司,森本 真司,本田 秀之,豊田 栄,石戸谷 重之,後藤 大輔,梅澤 拓,長谷部 文雄,石島 健太郎,飯嶋 一征,吉田 哲也
Organizer
大気球シンポジウム2020
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[Presentation] Observations of elemental and isotopic ratios of atmospheric major components and its application to detect atmospheric circulation and ocean heat uptake changes2020
Author(s)
Ishidoya, S., S. Sugawara, S. Morimoto, D. Goto, Y. Tohjima, K. Ishijima, D. Belikov, F. Hasebe, K. Tsuboi, S. Murayama, N. Aoki, S. Aoki, T. Nakazawa
Organizer
AGU Fall Meeting 2020
Int'l Joint Research / Invited