2019 Fiscal Year Research-status Report
マグマ化学組成のバリエーションの情報科学的解析によるマグマ進化プロセスの理解
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19K04026
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
上木 賢太 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 技術研究員 (40646353)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | データ解析 / マグマ化学組成 / 数値モデル / 多変量解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、客観的基準に基づき再現性を持つ統計数理的手法を用いて、マグマ化学組成進化の伏在プロセスやその時空推移を捉えることにある。具体的には、多変量、他サンプルであるマグマ化学組成データを定量的に取り扱って情報抽出する枠組みを確立し、マグマ生成プロセスや時空変遷の議論を行う。そのために、統計数理的手法に基づいた天然のマグマ化学組成データおよび実験的に得られたマグマ化学組成の解析を同時並行で進める。2019年度は本研究のうち、計画に基づいて【課題1 統計数理に基づいた天然マグマ化学組成バリエーションの特徴抽出手法の確立】および、【課題2 統計数理に基づいた実験マグマ化学組成バリエーション解析手法の確立】を遂行した。【課題1】については、Ueki et al. (2018)で提示した解析手法に対して発展的改良を行い、全世界のマグマ組成を対象としてデータ解析を行うとともに結果の地球化学的考察を行った。さらに、将来的にマグマ組成への応用を行うことを見据えて、様々な岩石化学組成データに対する新規解析手法の開発を研究に参画した。【課題2】については、機械学習の手法を用いて、多数の実験結果から重要な変数を抽出するとともに、予測性が高いモデルを構築する手法を確立した。この方法に基づいて既知の温度・圧力・組成条件で実験的に生成されたマグマ組成を解析し、多数の結果を統合し予測を可能とするモデルを構築した。この研究によって、手法の確立及び基本モデルの構築が達成された。さらに、【課題1】および【課題2】双方に関して、2020年度以降の研究に用いるためのデータベース構築に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【課題1】に関しては、Ueki et al. (2018)で提示された機械学習に基づくマグマ組成の解析手法を新たに発展させる形で手法改良を行った。改良された手法に基づいてデータの数理解析を行った。解析では、機械学習の手法に基づいた変数選択を行うことで、多数の天然データから、生成場を特徴付ける特に重要な数元素を抽出した。これらの解析結果に関して、基礎的な地球科学的考察を行い、結果を国際学会で公表した。また、マグマ組成への応用を見据えて、変成岩などの化学組成を対象とした機械学習データ解析研究に参画し、結果が国際誌に論文として公表された。【課題2】に関しては、研究計画に従って、機械学習の手法を用いて、上部マントル相当の条件での含水マグマを対象とした熱力学モデルの構築を行った。組み合わせ全探索を行い、交差検証誤差を基準として変数選択を行うことで、含水マグマを含む相平衡を記述する際に重要な変数を抽出するとともに、予測性が高いモデルを構築できることを示した。この手法を、先行研究のコンパイルに基づくデータベースに適用することで、様々な温度圧力組成条件で生成された含水マグマ化学組成を統合する数式とパラメーターのセットを構築し、実際に相平衡計算を行った。この結果は、国際誌に論文として発表された。岩石熱力学のモデル構築に機械学習の手法を用いた先駆的な研究となった。さらに、2020年度以降に【課題1】【課題2】との統合解析を行うための新規データベースの構築(マグマ化学組成及び溶融実験結果のコンパイル)に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
【課題1】に関しては2019年度の研究でグローバルデータベースの解析を進め、基礎データ解析を終えた。解析結果と地球科学的情報との比較を進めることで地球科学的考察を行うとともに、必要に応じて追加解析を行う。さらに、本研究周辺の成果(本研究やUeki et al., 2018を含む)を、新規データにも簡便に適用可能とするアプリケーション等の開発に着手する。【課題2】に関しては、2019年度の研究によって、マグマ生成条件に敏感な元素や、マグマ生成条件に伴う元素の増減、すなわちマグマ生成条件に伴う元素バリエーションを理解するための手法が確立した。2019年度に構築されたモデルはマントル圧力と組成のみに対応する基礎モデルであり、天然の岩石からマグマプロセスを読み取るための研究に適用するためには、組成幅や圧力幅など多面的にモデルを拡張することが必要となる。2019年度の成果を元に、天然マグマ化学組成データへの適用に向けた実用モデルへと展開する。これまでの【課題2】の成果を応用する形で、天然データからマグマ生成条件を抽出するための新規モデル構築を進めることで【課題1】と【課題2】の連携研究である【課題3】へと着手する。さらに、【課題3】での統合に向けて【課題1】【課題2】双方において新規データベース構築を進める。
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Causes of Carryover |
物品に関しては、既存の設備の活用を行うことで費用の削減が可能となった。出張旅費に関しては、業務上の日程との関係で国際学会参加を見送った。さらに、年度末の感染症対応により出張予定が中止となった。これらのために、物品及び出張旅費に関して繰り越す必要が生じた。繰越予算は、次年度以降の成果公表やデータ解析物品購入のために使用する。学会参加や出張は、状況を踏まえて、次年度に実施する。
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Research Products
(9 results)