2020 Fiscal Year Research-status Report
高圧ー超高圧変成岩に適用可能な新しいラマン地質圧力計の開発
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19K04037
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田口 知樹 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 専任講師 (60791704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
纐纈 佑衣 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (20726385)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラマン分光分析 / 藍晶石 / 石英 / コース石 / 残留圧力 / 地質圧力計 / 変成岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
岩石が経験した温度圧力値を見積もる地質温度圧力計は、鉱物化学組成を用いた熱力学モデルが広く用いられている。しかし、この手法は各鉱物の熱力学データが必須であり、そのデータが不十分な鉱物も存在する。また、特定の鉱物共生にしか適用できないこともあり、温度圧力条件の見積もりが難しい岩石も多い。本研究では、藍晶石内に存在するシリカ包有物の残留圧力に焦点を当て、ラマン分光分析に基づく新たな地質圧力計の開発に取り組んでいる。 初年度に引き続き、石英包有物が保持する残留圧力値のばらつきについて、その原因特定を目指した。石英のラマンスペクトルを対象に、新たなソフトウェアを用いて、ピーク解析および残留圧力の再計算を実施した。その結果、昨年度に得られた解析値と大きな誤差が生じないことを確認した。しかし、昇温変成作用時に包有された石英だけでなく、クラックヒーリングにより形成されたと考えられる低残留圧力の石英も確認した。これは残留圧力のばらつきを生む原因の一つと示唆される。また、イタリア産の超高圧変成岩中のシリカ鉱物(コース石)に焦点を当て、その結晶内の残留圧力分布とナノレベルの界面観察を実施し、超高圧鉱物の保持機構やその地質学的意義についてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年4月付けで、研究代表者(田口)が京都大学から早稲田大学へ異動した。研究室主催者として独立したばかりであることや新型コロナウイルス感染症の影響もあり、実験室立ち上げが鈍化傾向にある。また、外部研究機関への分析を目的とした出張についても大きく制限されたため、当初予定していた実験の多くを延期した。しかし、これまでに得られた成果をまとめ査読付き国際誌へ投稿したこと、および本研究課題と関連する成果が論文として公表されたことから、研究自体はおおむね順調に進展したと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたデータをまとめ、藍晶石-シリカ包有物系の地質圧力計の確立を目指す。ラマン分析や透過型電子顕微鏡による観察を実施し、藍晶石およびシリカ鉱物の結晶学的データの取得を進める。しかし、新型コロナウイルスの感染者数が再び増加傾向にあり、最終年度も当初の研究計画通りに進行できない可能性が高い。感染状況を注視しつつ、最終年度の総括を推進する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定していた実験出張および国内外学会での発表のほとんどを取り消した。また、研究代表者(田口)の異動に伴う新規研究室立ち上げに関連して、その装置選定に遅れが生じた。そのため予算執行が予定通り実施されず、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(6 results)