2020 Fiscal Year Research-status Report
Geochemical investigation on stratigraphy of Cretaceous-Paleogene bounday
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19K04054
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 潤一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (10435836)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Tejada Maria・L・G 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 副主任研究員 (40598778)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オスミウム同位体 / 白亜紀-古第三紀境界 / 白金族元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,国際深海掘削計画IODP第369次航海にてオーストラリア南西沖メンテレー海盆のサイトU1514で掘削・回収された堆積物コアを化学分析し,その白金族元素濃度およびオスミウム同位体組成から白亜紀‐古第三紀境界の層準を特定することと,その古環境学的研究,ゴンドワナにおける生物進化について検討することを目的とし,2019年度から始まった.2019年度には(それ以前のパイロット研究と併せて)白亜紀‐古第三紀境界の層準について,オスミウム同位体組成と白金族元素のイリジウム,オスミウム濃度からU1514C-23R-2, 2-3 cmの深度であることが確定した.ここでは,イリジウムやオスミウム,ルテニウムなどの白金族元素の濃度が白亜紀の堆積物の数10倍に濃縮しており,天体衝突が起こったことを強く示す.また,オスミウム同位体組成は,白亜紀堆積物が0.6程度であるのに対し,この層準で0.16まで急激に低下し,再び高い値に戻るV字状の変動パターンが明瞭に示された.これは海水中に溶存するほぼ全てのOsが,一時的に地球外由来のOsで占められていたことを示す.これらの特徴は,先行研究で報告されている他の海域の白亜紀‐古第三紀境界の層準の特徴と一致した.2020年度にはこれらの成果を国際学会で発表し(Ota et al., JPGU-AGU2020),国際誌に速報論文を投稿した (Kuroda et al., Geological Society of America, Bulletin).今回の結果を先行研究と比較すると,本研究で対象としたサイトは,オスミウム同位体組成の低下のV字状の変動パターンが他の海域に比べて緩やかである特徴がわかった.これは生物擾乱による物理的混合や間隙水への再溶解と拡散によるものと推察される.2020年度の研究で,物理的混合がより可能性が高いことを数量的に解明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,国際深海掘削計画IODP第369次航海にてオーストラリア南西沖メンテレー海盆のサイトU1514で掘削・回収された堆積物コアを用いた白亜紀‐古第三紀境界の絶滅イベントの理解を目的としている.2019~2021年度の3年間で,前半(2019~2020年度)にコア試料の化学分析(白金族元素濃度およびオスミウム同位体組成)を中心に行い,白亜紀‐古第三紀境界の層準を特定する.そのデータを基に年代層序学的検討を行う.研究期間の後半(2020年度後半~)には,その古環境学的研究,およびゴンドワナにおける生物進化について検討する.2019~2020年度には当初計画通り,精力的に堆積物の分析を進めた.2020年度までに行った分析から,白亜紀‐古第三紀境界の層準が完全に特定することができた.天体衝突層準は,後の断層運動や底層流による削剥などで失われることが多く,インパクト層準が深海盆で保存されることは稀で,世界的にみても深海盆で完全連続シーケンスの報告例が少ない.本研究課題タイトルの通り,世界3例目の完全シーケンスの発見となった.2020年度には,成果を国際学会で発表し,速報論文を執筆して国際誌に投稿した.2020年度には,白金族元素の堆積後の生物擾乱による物理的攪拌と,間隙水への溶解と拡散について検討し,前者の寄与が大きいことを明らかにした.さらに,白金族元素の中でもPdやPtが他の白金族元素(Ir, Os, Ru)に比べて天体衝突層準でのピークが不明瞭であることが判明し,その原因について考察した.液相濃集性の違いがもっともらしい原因であると考えている.つまり,もともとPdとPtは大陸地殻にも比較的豊富に含まれており,バックグラウンド値が高いため天体衝突によるピークが不明瞭になった.今後はこの点について掘り下げたい.以上のことから,おおむね順調に進んでいると結論づけられる.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究で,南西オーストラリア沖メンテレー海盆にて国際深海掘削計画IODP第369次航海の掘削サイトU1514で掘削・回収された堆積物コアから白亜紀‐古第三紀境界の絶滅イベント層準を突き止めることに成功した.白金族元素の濃度とオスミウム同位体組成から明らかにできた隕石衝突層準を特定でき,そのパターンから,前後の層が連続的に堆積したことを示すことができた.今後は,データを順次増やしてより高解像度を向上させ,世界最高水準の高解像度187Os/188OsOs‐PGE記録を得る.また,衝突層準が認定できたことにより,白亜紀末の大量絶滅イベントを引き起こした隕石衝突が,南半球高緯度の深海盆にどのような影響を与えたかについて研究する下地ができた.今後は,古環境学的にも着手する.今回,新たな発見として衝突層準よりも下位(つまり古い時代)から漸次的にOs同位体組成が低下していることが判明した.隕石衝突の30万年前からインドのデカントラップ洪水玄武岩が噴火していたことが知られており,玄武岩由来の低い同位体組成が海洋に供給されていたことを示唆するものの,そのOs同位体比の低下は,より古い時代に遡るように見える.それは,南東インド洋に特異的なローカルな噴火活動を意味するかもしれない.この点について,より議論を深める.また,隕石衝突層準で得られた白金族元素のピークは,Ir, Os, RuのグループとPt, Pdのグループで大きく異なることも判明した.この原因が何かを検討する必要も出てきた.今後は,これらの課題について,より詳しく検証していく.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で,一部予定していた海外での会議などがキャンセルになったため,次年度使用額が発生した.この経費は,追加試料分析に充てる予定である.
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Late Cretaceous stratigraphy and paleoceanographic evolution in the Great Australian Bight Basin based on results from IODP Site U15122020
Author(s)
MacLeod K.G., White L.T., Wainman C.C., Martinez M., Jones M.M., Batenburg S.J., Riquier L., Haynes S.J., Watkins D.K., Bogus K.A., Brumsack H.-J., do Monte Guerra R., Edgar K.M., Edvardsen T., Harry D.L., Hasegawa T., Hobbs R.W., Huber B.T., Jiang T., Kuroda J. et al.
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Journal Title
Gondwana Research
Volume: 83
Pages: 80~95
DOI
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[Presentation] 古い海洋プレート沈み込み直前の屈曲断層に伴う加水に関連するCHIKYUを使った国際海洋掘削申請提案:科学目標と掘削戦略2020
Author(s)
森下知晃, 藤江剛, 小野重明, 山野誠, 氏家恒太郎, 山口飛鳥, 井尻暁, 土岐知弘, 鹿児島渉悟, 石川正弘, 片山郁夫, 黒田潤一郎、鈴木庸平
Organizer
日本地球惑星連合-米国地球物理学会合同会議JPGU-AGU Joint Meeting 2020