2019 Fiscal Year Research-status Report
電解加工による大面積一括表面テクスチャリングの実現とその切削工具への応用
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19K04123
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小谷野 智広 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (20707591)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電解加工 / 表面テクスチャ / 短パルス / 切削工具 / 切削加工 / 超硬合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,電解加工において,微細周期構造を有するmmオーダー以上の電極とμsオーダー以下の短パルス電源を用いることによって,大面積の表面テクスチャリングを高精度で一気に実現できる電解加工法を構築することを目的としている.さらに,本手法を用いて切削工具に種々のテクスチャを付与することで,工具摩耗低減などの切削加工特性向上を目指す.電解加工によって大面積への一括での微細表面テクスチャリングを行うためには,所望のテクスチャ形状を反転した微細周期構造を有する電極が必要となるため,その電極を新たに開発した.加工部と電解液供給部をそれぞれで薄板で製作し,それらを積層して組み合わせることで溝形状テクスチャ加工用の工具電極とした.本構造とすることにより,テクスチャ形状の微細化と電極の製作が容易となった.工具電極の加工部の幅を狭くすることで,加工面の溝幅も狭くすることができた.また,電解液供給部の幅を狭くすることで,加工面に付与するテクスチャの周期も小さくすることができた.さらに,加工電源の短パルス化が加工精度に及ぼす影響を調査した結果,パルス幅を小さくするほど加工精度が向上し,微細なテクスチャの加工が可能となった.その結果,幅・周期が100μm以下の溝形状の微細周期構造を一括して工作物表面に付与することができた.また,超硬合金切削工具のすくい面に対してテクスチャリングを行った結果,概ね均一なテクスチャを付与することができた.しかし,本切削工具を用いてフライス加工を行った結果,期待に反し,テクスチャ工具の摩耗量が通常の工具に比べて大きくなった.この原因としては,電解加工過程における超硬のコバルトの溶出により工具表面が脆化したことや,テクスチャの形状が適切でなかったことが考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電解加工によるテクスチャリングのための新たな電極を開発し,加工条件を適切に選定することで,幅・周期が100μm以下のテクスチャを一括して加工するという高精度な電解加工が可能となった.本研究で得られた知見は,一般的な電解加工の高精度化にも寄与することが期待できる.一方で,電解加工によりテクスチャを付与した超硬切削工具では,かえって工具摩耗が増加するという予期せぬ結果となってしまったため,この対策が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
電解加工により100μm以下の微細テクスチャを一括して工作物に付与することが可能となったが,現状ではその加工面積は数mm×数mm程度である.そこで,さらに大きな加工面積を有する電極を製作するとともに,加工面積が加工特性に与える影響を調査する.なお,加工面積が増加すると,電解加工回路の配線に存在するインダクタンスの影響により,加工電源の短パルス化の効果が薄れることが予想される.そこで,電極を分割し,各電極に給電する分割給電法によりその対策を講じる.また,印可するパルス電圧の大きさ,周期や電解液濃度などの加工条件を最適化し,加工精度と加工速度の向上を図る.また,超硬切削工具へテクスチャを付与することができ,切削加工も行えたが,テクスチャを付与した工具では期待に反して摩耗がかえって増加するという結果となった.この原因としては,超硬のコバルトの過度な溶出が考えられる.そこで,コバルトの溶出を防げる加工条件を明らかにする.また,摩耗が増加した原因としては,テクスチャ形状が適切でなかったことが考えられるので,テクスチャ形状を最適化し,切削加工特性の向上を図る.
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Research Products
(3 results)