2019 Fiscal Year Research-status Report
超音波によるスラリーの相変化熱流動センシングと音響相図の学理構築
Project/Area Number |
19K04226
|
Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
義岡 秀晃 石川工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (80259845)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
経田 僚昭 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50579729)
八賀 正司 公立小松大学, 保健医療学部, 教授 (80123305)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | スラリー / 計測 / 融解凝固 / 蓄熱 / 超音波 / 状態図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、相変化スラリーの熱流動が基本となる潜熱蓄熱、材料製造、輸血ライン管理等の応用技術の高度最適化を目指し、物質系の液固相変化(異相率、各相の状態量等)と流動(速度)を超音波による音速情報に基づき“視える化”することを目的とするものである。研究の初年度である本年度は、流動のない静的な場を対象に、塩化ナトリウム水溶液を供試した融解凝固装置と、超音波送受信回路を含む音速計測システムを立ち上げるとともに、実験的追究によりスラリーの凝固融解現象と超音波挙動との相関について議論した。本年度で得られた主な成果内容を以下に示す。 (1) 塩化ナトリウム水溶液の融解・凝固過程と超音波挙動との関係について追究し、液相域・Mush域・固相域の各領域における音速変化が受信波形の持つ意味とともに特徴づけられた。 (2) 従来の温度-濃度を示強性変数とした相平衡状態図に対して、さらに示強性の音速情報を加えた新規相平衡状態図(YKH音響相図ど称する)が創案され、初期組成をパラメータとした凝固経路が音響相図上で明らかとされた。 (3) その音響相図に基づき、相変化を伴う種々の状態量が音速測定により非侵襲検知可能であることが示され、特に塩化ナトリウム水溶液から生成されるスラリーの氷充填率が音速から導出できることを明らかとした。 以上、本研究の技術的目標であるスラリーの相変化流動を計測するための超音波送受信システムが構築され、状態計測の基本となる音響相図の学理が塩化ナトリウム水溶液の場合を対象に展開された。より高温場への適用と、流動場、すなわちスラリー流動における流速・流量計測への拡張が次年度以降の課題となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、相変化スラリーの生成系と超音波計測法による音速測定系を一体とした計測システムを製作し、実験によって、音速変化を伴う凝固・融解現象が解明された。具体的には、試料の温度と濃度を変化させた音速計測実験を行い、温度濃度共存場のもとでの相変化経路を、温度・濃度センサーでは観測不能な反応を含めて音速で関連づけることができ、複雑な凝固・融解現象の全容を音速情報に基づいて解明することができた。さらに、実験によって関連付けられた相変化過程と音速情報の関係から、将来の応用計測システム開発の基本となるツール、すなわち発現相と相の状態を音速変化で規定した全く新しい状態図を創作し、日本冷凍空調学会論文として発表することができた。 また、より高温場の合金系を対象とした計測システムについても、約300℃クラスの対象にたいしては良好な成果を得ている。以上、本研究の課題であった(1)広温度域音速計測システムの構築、(2)音速変化を伴う凝固・融解現象の全容解明、(3)音響相図の学理構築は概ね達成されてきており、 (4) 熱移動と流動の同時計測が主として残された課題となっている。以上のような理由から本年度の達成度を当初の計画以上に進展しているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究が提案する計測法の発展的応用としては、ダイナミック型氷蓄熱システムや、太陽熱等を有効利用するための高温蓄熱用PCM(Phase change material)への適用が考えられる。これらの技術分野への応用を目標として、今後は、氷スラリーを輸送して利用するシステムを製作し、管内流動を伴うスラリーの熱流動解析に推し進める。加えて、太陽熱などの高温蓄熱用PCMとして注目されているAl基合金を対象として音速計測システムの開発に挑戦し、応用研究を進展させる方策である。
|
Causes of Carryover |
初年度では,まず相変化過程における状態センシングの基礎となる音響相図の解明を目標に,流動のない静的な場を対象として取り組んだ。次年度以降からは,今後の推進方策でも述べたとおり,流動場における実験を精力的に推し進める必要がある。そこで、実験装置の改良費、得にスラリー流動を対象としたコリオリ式流量計を検討するための費用として次年度に繰り越した。 翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画については,上記経費のほか,前年度に引き続き実験を行うための試料,温度センサ,情報の収集と発信のための諸経費ならびに研究発表旅費等に使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)