2019 Fiscal Year Research-status Report
太陽電池搭載車における走行時の部分影の影響とその対策に関する研究
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19K04338
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
西嶋 仁浩 崇城大学, 情報学部, 准教授 (50363544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 栄治 崇城大学, 情報学部, 教授 (10196032)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 太陽光発電 / MPPT制御 / DC-DCコンバータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自動車のボディーに取り付けられた太陽電池から最大限にエネルギーを引き出すことである。建物や街路樹によって走行中に生じる部分影や泥汚れによる発電量低下を防ぐために、小分割された太陽電池ごとにシール形の電力変換回路を張り付けて、高速に最大電力制御を行う。 初年度の研究目的『シール形電力変換回路の開発、高速な最大電力制御技術の適用』(平成31年度)においては、(1)『割れにくく曲げられる超薄型のチョークコイルの開発』を実施した。ワイアレス充電用の磁性シートを用い、厚さ約1mmの曲げられるコイルを試作し、既存のコンバータのチョークコイル(約4mmの曲げられないコア)と取り換えて評価した結果、電力効率が若干(3%程度)低下するものの、薄型で曲げられるコイルにおいて150W程度を出力できることを確認した。(2)『高速な最大電力制御技術の適用』については、高速な制御方式を採用することで100μsの超高速な電力制御が実現できることをシミュレーションで確認することができた。これは従来の最大電力追従制御における1秒程度と比べると1万倍の速さであり、車の走行時に発生する瞬間的な部分影の発生に余裕を持って追従できる速度である。(3)『自動車の走行モデルを評価するための部分影測定装置の開発』については、走行中の日射量変化のモデルを実際に測定するために、光センサー、温度センサー、GPSを搭載しマイコンでデータを収集する装置の開発を行い、日射量を測定できる試作機を自作した。今後、自動車に搭載して日射量の測定を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)『割れにくく曲げられる超薄型のチョークコイルの開発』については、非接触充電用の磁性シートを応用し、割れにくく曲げられるチョークコイルを開発した。磁気シートは薄いので、コアの飽和を防ぐために、メアンダ構造のチョークコイルを検討した。申請書では0.2mm厚のシートを利用する計画であったが、0.3mm厚のシートを用いた約1mm厚のコイルでも十分に湾曲させられたので、こちらを採用した。このコイルを、2MHzで動作するVicor社のDC-DCコンバータに取り付けて効率を測定した結果、150Wを約95%の高効率で変換できることが分かった。もともと取り付けられているコイルは4mm厚で曲げることができないので、本研究成果によって、厚さ4分の1と湾曲性という特徴を実現できたことになる。 (2)『高速な最大電力制御技術の適用』については、従来の山登り法を用いた最大電力制御の制御遅延問題、さらには、マイコンを活用することによるコストアップを避けるために、山登り法を用いずに、かつ、アナログ制御によって、高速に電力制御を行う手法を考案し、シミュレーションにより100μsの超高速な電力制御が実現できることを確認できた。これは従来制御における1秒程度と比べると1万倍の速さであり、走行時に発生する瞬間的な部分影の発生に余裕を持って追従できる速度である。 (3)来年度、モデルベース開発ツールによる走行モデルの構築の研究を行うにあたって、走行中の日射量変化のモデルを実際に測定しておく必要があったので、計画を一部変更して『部分影測定装置の開発』を行った。その結果、光センサー、温度センサー、GPSを搭載しマイコンでデータを収集する装置を自作し、日射量の瞬間的な変化をmsオーダーで測定することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
仕様上は、約1mm厚のフレキシブルコイルでも問題ないが、令和2年度は、0.7~0.8mm厚でも十分な特性を得るために新たな構造のチョークコイルを試作予定である。このコイルの試作が終了した後、コンバータの試作を行い、95%の効率が達成できるかを評価する。フレキシブル性のあるシール型電源を実現するにあたっては、曲げられるコンデンサも必要になるが、本件においても、共同研究企業が有している技術が活用できる可能性があり、研究計画に追加して検討を行う可能性もある。 『部分影測定装』の試作がほぼ終了したので、令和2年度は、この測定装置を搭載した車を準備し、実際の公道を走行することで、様々な条件下で日射量をデータ収集する。また、測定した日射量モデルを用いてシミュレータで評価することで、既存の太陽光発電システムにおける部分影の影響を具体的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
9千円弱の繰越金については、次年度の:太陽光発電システムの試作費用の一部に活用する。
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