2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K04345
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 隆 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (60371283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 祐嗣 一般財団法人電力中央研究所, 電力技術研究所, 上席研究員 (10371296)
本間 宏也 一般財団法人電力中央研究所, 電力技術研究所, 上席研究員 (40371562)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レーザー / プラズマ / 分光 / ポリマー / がいし / 劣化診断 / 遠隔計測 / 電力設備 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー誘起ブレークダウン分光(LIBS)を用いたポリマーがいしの遠隔劣化計測技術の開発に関して、以下の結果を得た。 (1) 計測のロバスト性の評価:遠隔計測においては、レーザー照射条件の変化が計測結果に影響を及ぼす可能性がある。離隔距離10 mの計測において、レーザー照射条件に対する各発光線の発光強度とAlに対するSiの発光強度比の変化を計測した。レーザーエネルギーを50 mJから200 mJまで変化させた場合、Alに対するSiの発光強度比はほとんど変化しなかった。また、レーザー光の焦点距離を~0.5 m変化させた時、AlとSiの発光強度が最大値に対して30%以上変化したが、発光強度比の変化は±5%以内であった。これらの結果より、今回開発した計測手法においては、レーザー照射条件の変化が計測に与える影響は小さいことを示した。 (2) 表面付着物質の影響:経年ポリマーがいしの計測において、レーザー照射回数が3回目までは計測値が安定しなかったが、計測前に弱いレーザーエネルギーで表面付着物質を除去することにより、最初のレーザー照射から安定な計測が可能になった。これより、表面付着物質が計測に影響を与えていることを明らかにし、付着物質をレーザー光で除去することにより、表面から安定した計測が可能であることを示した。 (3) レーザーパルス幅が計測に与える影響:パルス幅200 fs、エネルギー5 mJのレーザーパルスを、焦点距離250 mmのレンズでサンプル表面に集光照射した。Alに対するSiの発光強度比を計測した結果、経年サンプルでは新品サンプルに比べ、50%の減少が観測された。これは、エネルギー分散型X線分光法による成分比の計測結果と良く一致し、ナノ秒パルスを用いた結果よりも良い一致を示した。これより、フェムト秒パルスを用いることにより、高精度な計測が可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019-2020年度の研究計画において、2020年度は、レーザー照射条件としてパルス幅(フェムト秒~ナノ秒)に対する発光強度の関係を明らかにした。また、2021年度における研究計画である、ポリマーがいしの遠隔劣化診断技術の開発においては、離隔距離10 mの遠隔計測において、ポリマーがいしの劣化診断への適用が期待されるSi/Alの発光強度比がレーザー照射条件の変化に対してロバスト性を有することを明らかにした。さらに、表面付着物質をレーザー光で除去することにより、表面においてSi/Alの発光強度比の安定な計測が可能であることを示した。上記のように、2019-2020年度の研究計画に関しては概ね良好な結果を得ており、さらに2021年度の研究計画に関しても進捗がある。
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Strategy for Future Research Activity |
LIBSを用いたポリマーがいしの劣化箇所の3次元分布計測技術を開発する。本技術を用いて局所的な劣化を計測し、絶縁性能との関係を明らかにする。これにより、ポリマーがいし表面おける局所的な劣化が絶縁性能に与える影響を明らかにし、ポリマーがいしの劣化メカニズムを解明する。さらに、ダブルパルス等を用いることにより、測定感度および測定精度の向上を試みる。シングルパルス、ダブルパルス計測において、計測条件が変化した時のプラズマの密度、温度の変化を詳細に計測することにより、レーザーエネルギー密度等、計測条件の変化に対して影響の少ない計測条件を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2020年度においては、当初使用を予定していた物品費の内、既存のサンプルを用いて実験が進捗したため、新規のサンプルを作成する必要がなかった。また、新型コロナウィルスの影響で出張旅費を節約することができた。2021年度においては、当該年度に請求した助成金と合わせて可搬型の装置を試作し、課電中のがいしの診断への適用を実証する。
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