2019 Fiscal Year Research-status Report
極微細金属パターン付き基板による高性能低消費電力グラフェンFETの作製
Project/Area Number |
19K04531
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
久保 俊晴 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10422338)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 実人 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30635199)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | グラフェン膜 / 金属凝集法 / 極微細金属パターン / アニーリング / ラマン分光 / EBSD / FET / 電子ビーム露光 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は金属凝集現象を利用して成膜したグラフェン膜の結晶性を高めるための研究、および極微細金属パターン付き基板によりサブミクロン幅のグラフェン膜を成膜するため、サブミクロン幅のライン状のNi膜を電子ビーム露光装置により形成する研究を行った。 グラフェン膜の結晶性を高める研究に関しては、触媒金属であるNi膜を蒸着中および蒸着後に加熱処理(アニーリング処理)することにより、その結晶子サイズが大きくなることを電子線後方散乱回折(EBSD: Electron Back Scatter Diffraction)により確認した。また、Ni結晶子サイズの増大に伴い、成膜されたグラフェン膜における結晶欠陥が低下することをラマン分光におけるD/Gピーク比が減少することにより確認した。以上のNiに対するアニール処理により結晶性が増大したグラフェン膜を使用し、電界効果トランジスタ(FET: Field Effect Transistor)を作製したところ、その電子の流れ易さを示す電界効果移動度はアニール処理を行わない場合と比べて2倍の値となり、特性が改善する結果が得られた。 また、サブミクロン幅のライン状Ni膜を形成する研究に関しては、電子ビーム露光装置のメンテナンスもあり、最終的にサブミクロン幅のグラフェン膜を形成することはできなかったが、電子ビーム露光装置によりNi上レジスト膜に微細パターンを形成する研究を進めることができた。2019年度に発見したNi膜をアニール処理することによりグラフェン膜を高品質化させる方法を今後の研究に適用することにより、極微細パターン付き基板により作製するグラフェン膜および電子デバイスの特性を大きく改善することができるものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の最終目標はライン状の極微細金属パターン付き基板、すなわち、サブミクロン幅のNi金属パターンを用いて、ライン状のグラフェン膜を形成することであったが、Ni金属パターンを電子ビーム露光装置により形成する実験が初めての試みであったこともあり、最終的にグラフェン膜を形成することはできなかった。電子ビーム露光により形成したレジストパターンを現像したところ、所望のパターンが形成されていなかった。電子ビーム露光装置は2019年度にメンテナンスを行い、その動作に問題はなかったため、パターンを描画するためのプログラムに問題があったことが考えられる。2020年度はプログラムを見直し、実験を繰り返すことにより、所望の極微細Ni金属パターンおよびグラフェン膜を得ることが可能である。また、2019年度は、Ni膜をアニール処理することにより、グラフェン膜を高品質化させ得ることを発見したため、この方法を今後の研究に適用することにより、極微細パターン付き基板により作製するグラフェン膜および電子デバイスの特性を大きく改善することができるものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は電子ビーム露光による極微細Ni金属パターン付き基板の形成実験を開始することができたので、2020年度は引き続きこの実験を行う。当初の計画通り、2020年度は極微細Ni金属パターン付き基板を用いてグラフェン膜の成膜を行い、形成したグラフェン膜をラマン分光により評価すると共に、その電気特性を評価する予定である。電気特性の評価には、グラフェン膜の電気伝導性に加え、2019年度と同様にグラフェンFETも形成し、そのデバイス特性を評価する。形成されたグラフェン膜の結晶品質と電気特性の評価から、2020年度は金属凝集の制御性とグラフェンFETのデバイス特性を両立するNi金属パターンおよびグラフェン成膜プロセスを明らかにする。2020年度の成果を基に、2021年度にFETの作製条件の最適化を推し進め、高性能、低消費電力のグラフェンFETを作製する。
|
Research Products
(4 results)