2020 Fiscal Year Research-status Report
マルチスケールにおける細粒土砂動態の非平衡性がもたらす土砂堆積現象の解明
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19K04625
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤堀 良介 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (50452503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 守啓 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 准教授 (00647042)
川村 里実 (山口里実) 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(寒地土木研究所), 主任研究員 (70399583)
岡本 隆明 京都大学, 工学研究科, 助教 (70599612)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マルチスケール / 非平衡性 / 浮遊砂 / ウォッシュロード / 土砂水理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然堤防帯河道における掘削後の細粒土砂堆積速度予測モデルの高度化のため,木曽川水系揖斐川を対象に,中小出水時から高水時における土砂濃度観測,掘削地の土砂堆積現地実験,改良モデルによる2020年出水期の再現計算を行った.観測の結果,データが不足していた流量100~1000m3/sでの土砂濃度計測値が多く得られ,流量Qと土砂濃度Cの関係を修正した.現地実験では,4種のパネルを設置し,出水期における土砂の堆積厚及び粒度分布を分析した.夏季に継続した出水による堆積量は,ヤナギの繁茂のために平均年堆積速度を大きく上回った.再現計算では修正したQ-C式を与え,現地の土砂堆積厚をほぼ再現する結果が得られた. また,植生域による流速分布の変化と浮遊砂堆積の影響を詳細に検討するため,環境整備で裸地化した中小河川を対象として,水位計測,浮遊砂観測,微地形の高頻度測量,模擬植生パネル設置による出水時土砂堆積状況の計測等を実施した.植生パネルに堆積した土砂粒径と観測値より推測した水理量の関係から,植生域に堆積する土砂の輸送が浮遊砂に依存することが示された.また流速が植生内で減速することによって生じる浮遊砂濃度フラックスの収支を用いた土砂堆積速度の計算モデルを作成し,実測値との比較を行った結果,比較的良好な再現結果を得た. さらに,植生群落内部での土砂堆積への乱流構造への寄与について水路実験を実施した.PIV計測から乱流の詳細構造を検討した結果,乱流構造がもっとも発達する最適な植生長/水深比を明らかにした.また植生群落内部での浮遊砂堆積状況について検討した結果,群落上流側には堆積がみられず,下流側で土砂堆積がみられた.鉛直方向の乱流構造が発達しているケースほど土砂堆積が顕著であり,乱流構造が土砂堆積に寄与していることが示唆された. 他,厚真川流域を対象として浮遊砂の検討を実施し,結果を整理中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において,現地での地形計測や堆積土砂の分析に関しては,3年間継続して実施する予定としている.ここまで揖斐川(原田)や庄内川(赤堀)ではGNSS機器や写真測量を利用した微地形の変遷や土砂サンプル採取による分析などで十分な観測結果を得ており,定性的な現象の理解が進んでいた.本年度に関しては,揖斐川(原田)と一級河川庄内川2次支川の香流川(赤堀)の現地観測において模擬植生パネル(および対照実験用のパネル)を設置することで,現地の現象においても堆積の速度や粒径分布の情報を高精度に取得することが可能となり,定量的な評価のための情報の蓄積が進んだ.合わせて,前年度において揖斐川観測等にて確立されていた,採水サンプルに対する吸引ろ過を利用した濁度分析手法を香流川観測にも適用し,出水時のウォッシュロードの動態について精度の高い理解を得た.揖斐川での中小出水のレンジを踏まえた新たな観測と,香流川での詳細な濁質の観測結果により,一級河川の現地スケールの現象と,実験流路的な小スケール河川の現象をまたぐ範囲において,土砂堆積速度の計算モデルの構築と精度の向上を果たしたことからマルチスケールにおける土砂堆積速度の定量評価への道筋が見えたと考える. また,植生域の微細なスケールにおける現象の理解について,水理実験(岡本)から情報の蓄積を進めている.PIV解析と浮遊砂を利用した水路実験に関しては固有の水路ごと運用にあたり知見が必要な面が多いが,2020年度中に十分に手法として確立できたと考えられる.細粒土砂の植生域への沈降について今後検討が必要となる予定だが,スケジュール的にも現状で問題ない進捗状況であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
現地観測は3年間の継続を予定しており、揖斐川(原田)および香流川(赤堀)の観測を継続する.また昨年度はリソースの面で対応が不十分であった庄内川(赤堀)における観測を改めて実施する.ここまでの知見から,リーチスケールでの土砂堆積モデルの作成においては,水面下の地形を含めた高精度な河道形状の把握が必要であることが示されており,主流路の河床形状の取得について検討している.また,香流川においてはタイムラプスカメラ等を利用した水位の連続観測が軌道に乗ったため,多点での観測実施を予定している.これは中小河川において接続する流路の系統が複雑であることから,観測結果におけるそれらの影響を考慮するために実施する.これらの結果を利用することで,ここまでの知見の精度を向上させ,揖斐川や長良川観測で得られた流域スケールの現象への理解,庄内川で得られたリーチスケールの現象への理解,香流川で得られた植生域スケールでの現象の理解をオーバーラップさせる. また水理実験(岡本)に関しては,植生域での流下方向に変化する微小なスケールでのフラックスの理解等に新たな検討を加える必要が生じたため,その部分を重点的に実施する予定である.これは, 2020年度に確立した現地での土砂捕捉パネルを用いた観測の結果と連動させることで,水理実験で得られた知見と,現地での実際の現象との間に橋渡しをする目的を含む.また,ウォッシュロードの堆積機構に関して重要性を想定している干上がりの影響の確認のため,基礎的な水槽実験を実施予定である(原田).これらより,本研究でこれまで得られた植生域を想定した沈降の仕組みについて,それぞれ妥当性の検討を行う. 最後に,全体を踏まえて利便性の高い一貫したシステムへとモデルを統合することを試みる(川村).これには既存のパッケージを有効に活用することを想定している.
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Causes of Carryover |
(理由) 外部機関に依頼した土砂サンプルの粒度分析において,分析可能であったサンプルの実数が見積もりから減少したため.また社会情勢により遠隔地への出張が実施できなかったため. (使用計画) 観測対象の一つである香流川において接続系統の水理量,濁度等の確認が必要となったため,カメラや水位計の補充に使用予定である.
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Research Products
(4 results)