2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of a Simulation Method for Estimating Health Impact due to Change in Residential Environment
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19K04740
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
川久保 俊 法政大学, デザイン工学部, 准教授 (50599389)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 住環境 / 健康影響 / 便益 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は住環境改善がもたらす健康影響シミュレーション手法を開発することを目標としている。増加の一途を辿る我が国の医療・介護費を抑制するためにも、疾病を発症してから治療するという従来の対応に加えて、住環境を改善して疾病の発症予防に努めることが好ましいことを明らかにすることが本研究の最終的な目標である。 現時点では住環境改善がもたらす健康影響を個人別、世帯別、都道府県別に推計するモデルの開発まで完了している。開発したモデルを用いて、住環境の改善(例として開口部の断熱改修を想定)が居住者の健康状態に与える影響を金額換算した結果、一人当たり約7,000[円/年]の経済的便益を生み出すことが示された。そしてこの便益は住環境の改善度が高くなるにつれて上昇していく傾向にあることも確認した。住環境の抜本的な改善(例としてここでは高性能住宅に転居を想定)によって、約16,000[円/年]の経済的便益が創出される可能性が示された。 また、日本全国の全ての住宅で開口部の断熱改修を施した際に創出される経済的便益を都道府県別に推計したところ、最も人口の多い東京都では約920[億円/年]、最も人口の少ない鳥取県においても約29[億円/年]の経済的便益を創出することが推計された。さらに、各都道府県で創出される経済的便益の総和を取り、我が国全体への影響を推計したところ、我が国の年間の国民医療費の約2[%]にあたる約7,270[億円/年]の経済的便益が創出されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では二年目以降に住環境改善がもたらす健康影響シミュレーションモデルのプロトタイプを開発する予定であった。しかし、計画を前倒ししてシミュレーションモデルの開発を進め、初年度終了時点でシミュレーションモデルのプロトタイプの開発を完了している。 シミュレーションモデルの中身についても二年目以降に世帯レベルや地域レベル、全国レベルのあらゆるレベルで健康影響を推計できるようにする予定であったが、現時点で既に都道府県レベルで住環境改善がもたらす健康影響を推計できるようになっている。以上のように、現在の研究の進捗状況は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
①シミュレーションモデルの改良 現在の健康影響シミュレーションモデルでは、一部の疾病の発症リスク軽減に伴う経済的便益しか推計できていない。今後はモデルで考慮できる範囲を広げると共に推計結果の妥当性を検証しながらモデルの継続的な改良を図っていく予定である。 ②シミュレーションモデルの実装化 当初の計画では三年目に実施する予定であった健康影響シミュレーションモデルの実装を前倒しで実施する。健康影響シミュレーションモデルのWEBアプリケーション化やデータベースの構築などを進める。
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