2019 Fiscal Year Research-status Report
多様な公共性を担保するパブリックスペース・マネジメント手法構築
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19K04763
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Research Institution | Nishinippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
長 聡子 西日本工業大学, デザイン学部, 准教授 (70523653)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公共空間 / マネジメント / 公園 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公共空間利用に求められる価値観「公共性」の概念を整理し、多面的観点から評価する方法を提案することを目的としている。公共空間は元来、「公平性」を保つため、原則、特定の団体や個人による占用や収益目的での使用は禁止されてきたが、近年、維持管理の財源確保や地域の活性化を目的に、公共空間の利用用途を緩和する方向へ法制度の見直しが進展している。これは、公共空間利用における「公平性」の一律原則から、公平性や効率性、寛容性等を包含する「公共性」の価値観へ成熟しつつあることの現れであると考えられる一方、公共空間が特定の事業で占用されることによって利用が制限されたり多様性の低下につながる懸念もある。よって、「公共性」概念を現代の社会通念に即し体系的に定位させ、それに基づき公共空間を評価する方法を検討する必要がある。 当該年度は、まず公共空間の「公共性」の概念に関する複数の文献や既往論文に基づき、公共性の観点を①直接利用②間接利用③存在価値の面から仮説的に整理した。続いて、都市公園において民間事業者による飲食店等の利便施設の設置・運営を緩和する新たな制度であるPark-PFI事業を調査対象に、全国27事例の募集要項内に記述される「公共性」に関する文言の特徴や傾向を前述の観点に沿って分析した。その結果、公園の従来機能の維持や新しい公共に関する文言の割合が低い一方で、賑わい創出に関する文言の割合が高いことが明らかとなり、集客や経済的活性化の効果をより求める傾向にあることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画で示した2019年度に予定していた、①公共空間の「公共性」の概念整理、②「公共性」の評価方法の検討、③公共空間利用の事例収集がおおむね順調に進展しており、加えて収益施設整備型(Park-PFI)の事例分析にも取り掛かることが出来たため、上記のように自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、「公共性」の評価を多面的かつ統一的方法で実施できる評価指標の検討を進め、公共性の評価方法の確立を目指す。当評価指標を用いて、国内の複数の公園の評価を試行し、指標の適正を検証する。なお、当初、国内や欧州の公共空間マネジメント方法について現地調査を予定していたが、日本及び各国の新型コロナウィルスの感染拡大防止対策の今後の状況に即して、一部研究計画を変更しなければならない可能性がある。その場合は、オンラインや電話取材等で代替したり、調査を2021年度に実施するよう変更することで対応する予定である。
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Causes of Carryover |
国際学会への参加を予定していたが、投稿論文が不採択となり、参加できなかったため、その旅費や学会参加費等の支出が未使用となった。改めて論文内容を見直し、2020年度または2021年度の国際学会へ参加し、研究成果の公開を目指す。その費用として当該未使用分を利用する。
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