2019 Fiscal Year Research-status Report
観察調査による、自転車走行行動と走行違反・交錯回避行動のメカニズムの解明
Project/Area Number |
19K04793
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
原田 昌幸 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (20283393)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自転車 / 自転車利用者 / 自転車施策 / 都市交通 / 観察調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、国は、自転車と歩行者の事故が減少しないことなどの背景から、自転車の走行環境に関して、自転車を歩行者から切り離す「自転車道」と「(車道に設けられた)自転車レーン」「車道混在」の整備に大きく舵が切られた。一方、実際に道路整備を行う自治体は「車道の自転車走行を怖いと考える市民意識が強い」などの理由もあって、積極的な整備に躊躇しているように思われる。 本研究課題の目的は、「自歩道(共有)」「自歩道(視覚的分離)」「自歩道(構造的分離)」「自転車道」「自転車レーン」「車道混在」といった自転車の走行環境タイプ毎における、自転車の走行行動を解明し、自転車や歩行者の安全を担保するための方策を提案することである。 そのため、本研究課題では、「A.自転車走行行動のフィールド観察調査」「B.自転車通行帯の整備に積極的な自治体に対するヒアリング調査」「C.被験者によるフィールド走行実験」の3つの活動を計画している。初年度にあたる本年度は、AとBを進める計画を立てていた。Aについては、名古屋市内の5つの道路タイプをフィールド観察する予定であったが、計画通り、5タイプ、それぞれ複数地点の観察調査を実施し、例えば、「自転車レーン」では、レートとは逆向きの自転車の走行違反の多さと、歩行者との事故の危険性が低減できていないことや、路上駐車による車との事故の危険性が新たに生じていることについて数値データをともに指摘した。 Bの自治体ヒアリング調査も、5都市を訪問調査し、名古屋市以外のフィールド観察調査の候補地点の選定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、「A.自転車走行行動のフィールド観察調査」「B.自転車通行帯の整備に積極的な自治体に対するヒアリング調査」「C.被験者によるフィールド走行実験」の3つの活動を計画している。初年度にあたる本年度は、AとBを進める計画を立てていた。Aについては、名古屋市内の5タイプの道路をフィールド観察する予定であったが、計画通り、「自歩道(共有)」を2地点、「自歩道(視覚的分離)」を2地点、「自歩道(構造的分離)」を2地点、「自転車道」を3地点、「自転車レーン」を2地点について、調査を完了している。また、結果の分析も進んでおり、例えば、「自転車レーン」では、逆向きの自転車の走行違反の多さと、歩行者との事故の危険性が低減できていないことや、路上駐車による車との事故の危険性が新たに生じていることについて数値データをともに指摘した。また、「自歩道(視覚的分離)」では、歩行者と自転車の交錯事故の低減という観点からは、自転車の通行位置の遵守率が50~72%とそれほど高くなく、歩行者の通行位置の遵守率も72~85%と完全ではないため、歩道上の人用の通行位置だけでなく自転車用の通行位置でも、歩行者と自転車の交錯事故の可能性が残ることを明らかにしている。なお、これらの成果の一部を、本学の紀要「芸術工学への誘いvol.24 2019」にて発表した。また、日本建築学会近畿支部の発表会で口頭発表する予定(投稿済み、2020年6月)である。 Bの自治体ヒアリング調査も、5都市を訪問調査するとともに、名古屋市以外のフィールド観察調査の対象地区の選定も予定通り進んでおり、大阪で2地点、東京で2地点、福岡で2地点の候補地を決めた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目は、当初の計画では、「A.自転車走行行動のフィールド観察調査」を、名古屋以外の3都市で実施する予定である。候補は、東京で2地点、福岡で2地点などである。加えて、「B.自転車通行帯の整備に積極的な自治体に対するヒアリング調査」についても、3自治体で実施する計画である。但し、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、フィールド調査やヒアリング調査の自粛が長引き、計画通りに進められない可能性がある。新型コロナの情勢を見極めながら、可能な範囲で進める予定である。 このような状況を鑑み、状況によっては、当初計画を変更し、3年度目に予定している「C.被験者によるフィールド走行実験」の予備実験を、前倒しで実施することも想定している。本実験では、異なるタイプの自転車走行環境を通る30分程度の自転車走行ルートを複数用意して、同一の自転車走行ルートを同一被験者に日時を改めて複数回(練習を含めて6回程度)走行させる実験を計画している。予備実験では、本実験に向けて実験方法や走行ルートの設定などについて、課題を明らかにし、実験方法を確立させる予定である。なお、この実験の狙いは、歩行者や自動車、他の自転車の状態によって、自転車走行行動がどう変化するかを調べることであり、同時に、慣れによる行動の変容も観察できると考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナの感染拡大防止により、2月後半から3月に掛けて、予定していた調査(出張)が中止になり、予定していたデータの整理などの作業を学生に依頼できなかったため、15万円程度の次年度使用額が発生した。コロナの感染が落ち着いたら、早期に実施する計画である。
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