2019 Fiscal Year Research-status Report
日本統治期ソウルにおける戦時対策用途の都市公共施設
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19K04817
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
安 箱敏 呉工業高等専門学校, 建築学分野, 准教授 (30725908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 拓也 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 助教 (40721361)
中川 理 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 教授 (60212081)
西川 博美 岡山県立大学, デザイン学部, 准教授 (00749351)
中嶋 節子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (20295710)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 京仁市街地計画 / 防空都市 / 風致地区 / 緑地計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1930年代後半から本格化していく植民地朝鮮における各主要都市の産業化に注目しながらその中でも特に都市施設としての公共用地の造成と変遷の過程を解明するもので、市街地計画の実施による都市開発事業から1940年代の戦時下の都市改造事業といった日本統治終末期の都市計画過程の変化像を把握し、現ソウルの都市構造の起源を解き明かすことを具体的な研究目標に設定している。達成目標としては、「京城市街地計画」の一環として進捗していく小規模の公共用地の解明をはじめに、その後の「京仁地域」に拡張される工業地域あるいは住宅地の造成事業、そして、戦時下で展開していく「都市防空計画」について考察を進めている。 令和元年度は、研究会と現地調査をはじめとして、韓国国家記録院など現地による文献調査と国内の図書館による史料調査を並行しておこなった。現地調査においては、研究代表者と分担者に加え、研究協力者の砂本文彦教授(神戸女子大)と金珠也氏(韓国大邱大学校)を現地の調査協力者に招いて共同でおこない、文献調査による制度全般の史料発掘については、研究代表者の安と協力者の石田を中心に進めてきた。戦時下の都市防空対策における調査結果については、その成果の一部として『ソウル学研究(第77号)』にて論文発表した。また、同年度の日本造園学会および建築学会における学術大会では、ソウルの市内中央部に計画されていた小公園計画の変容過程について南大門前公園計画を例にあげ調査結果を報告した。蓄積してきた研究成果は、同年11月に神奈川大学アジア研究センターで設けられた日韓建築シンポジウムを通して報告するなど、日本と韓国の両国に向けて発信を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成目標としては、以下の3つの項目を設定していた。①「京城市街地計画」の一大事業であった区画整理事業対象地に計画されていた公共用地と都市施設の造成過程について検証する。②「京仁市街地計画」に拡張される住宅地造成事業の特質を解明する。③戦時体制の下で展開していく「都市防空計画」といった都市改造事業の実態を把握し、その変遷過程を明らかにする。 令和元年度においては、京城府域を主な調査対象として都市計画施設の現地調査をおこない、当初の達成目標一部を遂行した。特に、「防空細道路」の計画については、「保健広場」の調査方法に引き継ぎ1939年の計画当初の史料と現況を照らし合わせながら調査を進め、後半の達成目標であった防空都市計画下の大京城を目指し高度な国防都市計画に移行していく当時の計画像を明らかにした。防空計画の範疇は、公園計画以外にも「風致地区」の指定など広範囲の緑地計画にも適用され、令和元年度の調査によってその具体像が少しずつ解ってきた。現在は、京仁地域に計画されていた「防空広場」における詳細について調査を続けている。1940年を前後して着手されていた総合都市防空計画は、京城から京仁地域に拡張され、朝鮮半島全域の主要都市に計画を予定していたことなど、戦時対策と融合しながら進展を遂げていく姿の一部が解明されたことは大きな成果と思われ、その成果については、今年度の建築学会学術大会(2020年4月15日に行事の中止決定)にて梗概発表を控えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の目標である「京仁地方計画」を研究対象の基準軸としながら、①永登浦地域からつながる京城府周辺部の住宅地造成事業における都市施設の整備事業を解明し、②京仁工業地帯計画の空間像の解明に努める。当初の調査方法として、韓国国家記録院など現地での新史料の発掘調査に重点をおいた現状調査による照合作業を予定していたが、今年度においては、新型コロナウイルス対策のため韓国現地における調査計画に多少の変更を念頭に入れ柔軟な方策を練っていく。引き続き、初年度の達成目標の一つであった区画整理事業対象地内の公共施設における現地調査と確認作業については、市内部の小規模「防空公園」の現地確認作業と合わせ来年度の次期課題として設定している。これらの推進方策においては、蓄えてきた既存の史料を精査し、日本国内の図書館、資料館による史料探索を優先にした文献調査、韓国の研究機関への史料要請など多方面からの発掘方法を視野に入れ研究を進める。また、韓国国家記録院所蔵の史料においては、近年デジタル化が進んでいることもあり、先ずはオンラインによる史料検索を徹底しておこなう。研究代表者を含む分担者、協力者は、検索から調査、発掘までのマニュアルを習得しており、発掘した1次史料等をもとに完成度を高める予定でいる。
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Causes of Carryover |
(理由) 前年度の3月末に韓国現地における調査を予定していたが、新型コロナウイルスの流行により渡航の断念を余儀なくされた。こういった事由より旅費の想定額が余ることで次年度使用額が生じた。 (使用計画) 本年度の旅費の予算に計上し、国内での研究会の開催、史料調査の費用として賄うつもりでいる。また、書籍購入や関連資料の複写、史料の要請など、郵送代金、事務手続きの手数料等の費用に充てることを考えている。
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