2019 Fiscal Year Research-status Report
Transient heat transfer and heat storage effect in thermoelastic martensitic transformation
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19K04981
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 博之 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80224533)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 形状記憶合金 / 蓄熱効果 / 非定常熱伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
形状記憶合金における熱弾性型マルテンサイト変態の潜熱量は、ニッケルチタン合金で最大 28 J/gが文献値である。従来、潜熱の最大化の条件は研究されていなかったので、本研究では示差走査熱量計(DSC)を用いて、さまざまな組成と加工熱処理を行ったニッケルチタン形状記憶合金の変態潜熱を測定し比較した。ニッケル組成が48.0, 48.5, 49.0, 49.5, 50.0, 50.5, 50.7, 51.0 at.%(原子パーセント)の組成の試料について、大きな潜熱を得るための条件として以下の結論を得た。 (1) β相で均質化熱処理後の試料に比較して、超弾性や形状記憶効果の最適化のために加工熱処理を行った試料では変態潜熱は減少した。 (2) β相均質化熱処理後の試料では、変態潜熱は50.0 at.%の組成で鋭い最大値のピークを示し、その値は平均 37 J/g であった。48.0 at.% Ni で32 J/g であり、51.0 at.% Ni で10 J/gであった。 潜熱蓄熱効果の応用例を具体的に示すことを目的として、ニッケルチタン合金繊維をアルミニウムブロックの中に分散して、その下端に熱源を接し、上端を強制空冷するヒートシンクを考案し、その伝熱特性を数値解析した。熱源はCPUで,強制空冷はファンを模擬したモデルである。熱源に一定の発熱量を持たせて、その温度を有限要素法で計算した。アルミブロックやファンがなければ温度は一定速度で上昇する。ニッケルチタン合金ワイヤの配置と体積分率を変えて冷却能率を比較した。その結果、有効な冷却効果のためには,合金ワイヤの分率と配置には最適解が存在することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度における研究目標は、形状記憶合金の中で蓄熱材料の選択とその物性値の確定であり、その目的は十分達成された。市販のニッケルチタン合金は形状記憶効果か超弾性で利用するために加工熱処理が施されて出荷されているので、蓄熱材料として大きな潜熱を利用するためには、一度、高温(800℃以上)真空中でβ相を均質化して、室温に急冷凍結する必要がある。本研究では、変態温度が80℃付近であるTi-50.0 at.% Ni合金において最大の潜熱量 37 J/gが得られた。この潜熱量は文献値 28 J/gと比較して40%弱大きく、この材料を用いて次年度以降の研究計画を遂行する。 潜熱蓄熱材料の実用化のためには、蓄熱効果を実験により視覚的にデモンストレーションすることが有効であると考えた。そのため初年度は、CPUのアルミニウムヒートシンク内にニッケルチタンワイヤを分散した複合材料を考案し、三次元有限要素法による伝熱計算した。この成果をふまえて次年度以降は、計算モデルの多様化と最適化を図り、モデルの試作を念頭においた計算機実験を積み重ねる計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画どおりに研究を進める予定である。本研究計画では、熱弾性型マルテンサイト変態における潜熱の発生とその非定常熱伝達による (i)マルテンサイト組織形成への影響を明らかにする物性研究と, (ii) 潜熱蓄熱効果を用いた固体冷却機の設計を行う応用研究が目的である。そこで初年度の研究成果に基づいて、次年度以降は、 (i)熱カメラによる熱流の可視化とマルテンサイト組織の関係を観察する実験的研究、および、いわゆるフェイズフィールド方程式(Ginzburg-Landau方程式)による変態シミュレーションと伝熱解析の理論的研究 (ii)アルミニウムとニッケルチタン合金ワイヤの複合材料によるCPUのヒートシンクモデルにおいて、冷却効率がより高くなるようなワイヤの最適配列を計算機実験により探索する。
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Causes of Carryover |
熱カメラを用いた伝熱実験を行う.そのための消耗品(例えば試料研磨紙あるいは測温熱電対)を購入する予定である。
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