2022 Fiscal Year Research-status Report
Transient heat transfer and heat storage effect in thermoelastic martensitic transformation
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19K04981
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 博之 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80224533)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マルテンサイト変態 / 潜熱 / 伝熱 / 熱力学 / 自己組織形成 / ステファン問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
銅合金形状記憶合金のCuAlNi(銅アルミニウムニッケル)単結晶およびCuAlMn(銅アルミニウムマンガン)単結晶の高温ベータ相を室温に焼き入れし、(001)結晶面を切り出し鏡面研磨して観察面として、試料の冷却・加熱により生成・消滅するβ1’(18R)およびγ1'(2H)マルテンサイト晶の形態を光学顕微鏡で観察した。マルテンサイトの形態は、従来から報告されている"帯状"あるいは"やり"(Spear, Wedge)状であった。マルテンサイトは晶壁面で分類される(011)プレートグループのバリアントが集合してドメインを形成することに着目し、相変態が起こるときのドメインの形態と結晶内の温度分布の不均一性との対応を調べ、関連性を見出した。変態の素過程はマルテンサイト晶の形成であるが、マクロ的にはプレートグループにより体積領域を占めてゆく。しかしながら、その形態についてはこれまでほとんど研究されていなかった。そこで本研究では、マルテンサイト変態の熱伝達とプレートグループの形成に着目した研究を展開することとしている。 実験技術では、試料の温度分布を知るために、細線の熱電対を用いて加熱・冷却中の試料温度を多点で計測した。また表面温度の分布を知るために、2次元のサーマルカメラによる表面温度計測を行っている。非接触の測定では、光学的な工夫によって遠距離や近接体の光学的拡大が可能であり、これによって温度の空間分解能が高くなることが期待できる。現在のところ、光学的な拡大のための装置開発に取り組んでいる。 融解凝固を伴う伝熱問題は製氷の分野で解明がすすんでいる。ステファン問題とは、氷の速度は製氷面の温度ではなく、氷と水の界面の温度勾配に支配されているとする。従来、形状記憶合金のマルテンサイト変態は準静的に起こるとされているが、実際には潜熱の給排出のため非平衡性があることを証明しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R4年度前半から、形状記憶合金のマルテンサイト変態における潜熱の熱伝達について、数種の合金単結晶における結晶表面の顕微鏡像のビデオ撮影を行い、その画像データを蓄積している。また熱カメラによる温度分布の実験に成功している。すなわち、本研究計画に提案した実験手法はほぼ実現し、結果が得られている。現在は、温度分布の測定分解能を向上して測定精度を高めることに取り組んでいる。 R4年度は,ナノおよびサブミクロン寸法の形状記憶合金粒子のマルテンサイト変態における潜熱に興味が生じたため、マイクロ粒子の合成にエフォートを用いた。その結果、マイクロ粒子の潜熱の大きさについて、結晶表面の相対的な増加による粒子寸法効果を確認した。成果は学術誌に公開する予定である。 研究計画が終了するR5年度までに実験と解析結果をまとめ、論文として公表する予定である。そのためには相変態中の伝熱現象を適切に表す相変化と伝熱現象の協調モデルを提示して、その数式表現が必要がある。その協調モデルとしてフェイズフィールド解析に取り組んでいるが、この理論面での展開を急ぐ必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
熱測定の精度を向上する。現状の実験装置において、温度測定の空間と時間の分解能を可能な限り高くなるように測定技術を改良する。特に、サーマルカメラによる温度分解能を向上させるために光学的な画像処理に取り組んでいる。 異なる形状記憶合金について潜熱効果を比較検討する。材料が異なるとマルテンサイトの結晶構造が異なるので、マルテンサイト晶の顕微鏡的な形態が異なる。本年度からは、MnCu(マンガン銅)単結晶、および粗大結晶粒多結晶であるFePd(鉄パラジウム)とNiTi(ニッケルチタン)合金について実験を行う。材料が異なると組織は見かけ上は異なるものの、相変態における潜熱効果は共通であるから、比較して本質的な因果関係を探る。 この現象を適切に表す物理モデルとその数式表現を検討している。伝熱工学の分野において融解凝固を伴う伝熱問題は製氷の分野で発展していて、氷の成長に関するステファン問題として知られている。この問題が金属固体のマルテンサイト変態においてどのような役割があるかが本研究の主たる課題である。計画初年度から進めているフェイズフィールド解析に基づいてステファン問題の一例として理論の展開を試みる 計画年度の最終年度であるので、関連学会(機械、金属)での専門家とのディスカッションと学術誌への投稿を急いでいる。先ず、昨年に行った、形状記憶合金の潜熱を用いた蓄熱器の設計に関する成果を投稿する予定である。
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