2019 Fiscal Year Research-status Report
Nondestructive In-situ Inspection for Laser Quenching to Carbon Steel using AE Method
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19K05087
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Research Institution | Anan National College of Technology |
Principal Investigator |
安田 武司 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 准教授 (70610468)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レーザ焼入れ / マルテンサイト変態 / Acoustic Emission / AE法 |
Outline of Annual Research Achievements |
焼入れ性の良いクロムモリブデン鋼(SCM440)を試料として,ファイバーレーザを用いたレーザ焼入れ実験を実施し,焼入れによって試料内に発生したマルテンサイト変態に伴う弾性波動現象(Acoustic Emission,AE)をAEセンサーによって検出した.試料加熱時のファイバーレーザはスポット形状,焦点はずし距離+34 mmとして,出力を200 W,210 W,220 W,230 W,240 W,250 W,260 W,265 W,270 W,275 Wの10種類とした.ファイバーレーザによる試料加熱は3秒間とし,これ以降ただちにファイバーレーザは停止され,試料の自己冷却能力による急冷(焼入れ)が開始される.ファイバーレーザの停止とAEセンサー信号の記録開始を連動させ,各出力条件での焼入れ中のAE波を検出,記録した. 実験後,顕微鏡組織観察より,試料加熱時のファイバーレーザ出力が低い200~230 Wの条件を除き,焼入れ部は緻密な針状組織となっており,マイクロビッカース硬さ試験の結果からこの組織の硬化が確認された(焼入れ部外ではHV約200,焼入れ部内では出力によりHV約500~800).そのため,焼入れ部にはマルテンサイト変態が発生し,マルテンサイト組織が形成されていると判断した.さらに,試料加熱時のファイバーレーザ出力が高いほど,形成したマルテンサイト組織の体積が大きいようであった.また,同時に検出されたAE波を確認すると,試料加熱時のファイバーレーザ出力が高いほど,波形の振幅,持続時間ともに大きく,出力が低くなるごとにこれらが減少する様子が確認された.焼入れ部の顕微鏡観察およびマイクロビッカース硬さ試験の結果,そして検出されたAE波の振る舞いを比較すると,AE波には形成したマルテンサイト組織の様相や体積,硬度等を示す情報が含まれていると予想され,この点を明確とすることができれば,レーザ焼入れ品の製造工程に適用可能な非破壊その場検査法の確立にとって有益となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において「実験は多くを事業期間1年目に実施する」としたことに対し,前節のとおり概ね順調にレーザ焼入れ実験およびそのAE波検出実験を実施することができたと判断している.また,2年目に実施を計画していた焼入れ部の顕微鏡組織観察やマイクロビッカース硬さ試験についてもほぼ完了させることができており,次節にて述べる焼入れ深さ測定やマルテンサイト組織体積の算出,そして検出されたAE波のパラメータ解析にすみやかに移行できる.ただし,ファイバーレーザによる加熱中の状況,特に温度や昇温速度に関する情報を取得し,急冷(焼入れ)過程に入る直前までのオーステナイト状態を推定する必要があるとの着想があり,この点について追加実験を実施すべきである.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,レーザ焼入れ実験後の試料焼入れ部顕微鏡組織観察の結果を用い,焼入れ深さの測定およびマルテンサイト組織の体積を算出する.次に,検出されたAE波について,AEパラメータであるAEイベント(振幅がノイズレベル等のあらかじめ設定したしきい値を超えたAEのことをAEイベントと呼ぶ)累計数やAEエネルギー(AE波の積分値)に従ってデータをまとめ,先に測定,算出した焼入れ深さやマルテンサイト組織体積との関係性を考察する.この検討によって,レーザ焼入れ品の製造工程に適用可能な非破壊その場検査として,焼入れ深さや生成したマルテンサイト組織体積を把握するにはAE波のどのような特性に着目すべきか,基礎的な方針を定めることができる.マルテンサイト変態がAE発生源であることは明確なため,マルテンサイト組織体積と変態時に発生したAE波のAEエネルギーに明確な関係性が見られるのではないかと予想,期待している.また,ファイバーレーザによる加熱中における試料オーステナイト化の状況を把握し,これが急冷(焼入れ)の際に発生するマルテンサイト変態とAE波挙動,そしてマルテンサイト組織に及ぼす影響を考慮する必要がある.この点については,加熱中の温度を観察する実験を実施しなければならないが,レーザによる局所加熱には接触式温度計を用いることができないため,非接触式放射温度計等を導入する必要がある. また,進捗状況について学会発表を実施し,議論等の結果をふまえ,適宜,追加実験,解析,検討を行う.
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