2019 Fiscal Year Research-status Report
Development and application of a new method for calculating spin and angle resolved photoelectron spectroscopy
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19K05262
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小林 功佳 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (80221969)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光電子分光 / 理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、1次元ラシュバ系について理論的に研究を行った。鏡映対称性のある系のスピン角度分解光電子分光では、放出される電子のスピンが100%偏極する現象が知られている。この現象はトポロジカル絶縁体やビスマスの表面状態にある電子が直線偏光の光によって励起されるとき等に見られ、スピン軌道相互作用の強い系における、電子のもつスピンの向きと軌道の対称性との強い結合の表れとして理解される。ただし、この場合に鏡映対称性のある状態は、表面2次元ブリアンゾーンの一部の領域にあり、100%偏極される電子も放出される電子のうちの一部である。したがって、放出される全電子の中で、偏極される電子の割合は必ずしも多いとは言えない。本研究では、偏極される電子の割合を増やす目的で1次元ラシュバ系について理論的に研究した。簡単なモデルを用いて数値計算を行った結果、放出される電子はすべての状態で100%偏極されることがわかった。ただし、偏極の方向はお互いに反対向きの2つの方向に分かれる。このため、放出されるすべての電子が同じ向きのスピンをもつわけではないが、放出される光電子のエネルギーおよび放出される方向を選択することにより、スピンが同じ向きの電子のみを集めることはできる。今後は、現実の物質でこのような状況が実現される系を探すことが課題である。そのような系の候補としては、ナノワイヤーの他に表面上に吸着したの1次元系などが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光電子分光に関する新たな研究を行い、新たな知見を得たから。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、1次元ラシュバ系の研究を行うとともに、バンド・アンフォールディングの計算も行う。固体の電子状態の計算では、スーパーセルを用いた計算がしばしば行われる。スーパーセルを用いた計算により得られたエネルギー・バンドは、角度分解光電子分光で得られるバンド分散とは必ずしも対応しない。このギャップを埋めるための方法としてバンド・アンフォールディングの方法がある。そこでバンド・アンフォールディングの方法を取り入れた計算を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの蔓延により学会が中止になったため、旅費の一部が執行されなかったため。このため、令和2年度により多くの研究発表を行う予定である。
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