2022 Fiscal Year Research-status Report
Development and application of a new method for calculating spin and angle resolved photoelectron spectroscopy
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19K05262
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小林 功佳 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (80221969)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光電子分光 / 理論 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 原子層 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、V5Se8の角度分解光電子分光で得られるエネルギーバンドに関する理論的な研究を行った。V5Se8は、バルクは反強磁性体とされているが、その薄膜に関する最近の実験では強磁性的な性質を示すことが報告されている。V5Se8は遷移金属ダイカルコゲナイドであるVSe2の層間にV原子がインターカレートした構造をもつが、最近、単層のV5Se8が作成されたとの報告があった。単層V5Se8の原子構造としては、通常は、2層のVSe2の層間に1層のVインターカレーション層が挟まれた構造が考えられるが、別の実験グループの報告では、この構造のVSe2表面にさらにV層が1層吸着した構造が提案されている。実験で作成されている単層V5Se8の構造を調べる目的で、角度分解光電子分光の計算を行った。
光電子励起の終状態の波動関数は、真空領域で単一の平面波状態であることから、物質内部では、表面平行方向がゼロの逆格子ベクトルをもつ成分と主に接続すると考えられる。このため、この波動関数成分の重みをつけて、エネルギーバンドを計算した。角度分解光電子分光の実験を比較するために、エネルギーに0,1eVの幅を付けてスペクトルを計算した。表面がVSe2層である場合とV層である場合について計算したところ、両者に違いは少なく、似たような結果が得られた。ただし、実験で得られているバンド分散の特徴を前者はより良く再現することから単層V5Se8はVSe2層が表面にある構造であると結論した。これ以外にも実験で得られた単層構造がV2Se3やV3Se4である可能性も考えて計算を行い比較したところ、表面がVSe2層である単層V5Se8の計算結果が最も良く実験結果を再現することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに論文を出版したから。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度は、これまでの研究成果を広く発表するとともに、さらに新たな系の理論的研究を行う。
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Causes of Carryover |
コロナにより学会発表や国際会議が減っため。次年度にこれらの発表をする予定。
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Research Products
(2 results)