2019 Fiscal Year Research-status Report
格子間原子集合体の一次元運動過程を取り入れた核形成・成長モデルの改良
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19K05334
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 裕樹 広島工業大学, 工学部, 教授 (20211948)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 一次元運動 / 格子間原子集合体 / その場観察 / 超高圧電子顕微鏡 / 点欠陥反応 / 照射損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,超高圧電子顕微鏡を用いた電子照射その場観察により,鉄と銅に形成される格子間原子集合体の一次元(1D)運動を調査し,格子間原子集合体の形成・成長,また照射損傷組織発達に1D運動がどう影響しているのかを明らかにすることを目的としている.今年度は銅の格子間原子集合体の1D運動に対する不純物の影響を調査した. 公称純度9Nの高純度銅から以下の2種類の試料を作製した.1)『標準試料』はインゴットから切り出した小片を圧延して厚さ約0.1 mmのシートとし,そこから3 mmφディスクを打ち抜き,ひずみ取り焼鈍(熱処理)を施したものである.2)『熱処理なし試料』はインゴットから切断,機械研磨および電解研磨により厚さ0.1-0.2 mmのシートを作製し,そこから打ち抜いた3 mmφの試料である.さらに両者ともに電解研磨を行なって透過電子顕微鏡用薄膜試料とした. 超高圧電子顕微鏡(北海道大学JEM-ARM1300)を用いて1250kV電子照射を行い,導入される格子間原子集合体の1D運動をその場観察した.照射温度は300 K,照射強度は0.007 dpa/sとした. 両方の試料に間欠的な1D運動が観察され,1D運動の距離はともに幾何分布に従っていた.標準試料に比べて熱処理なし試料では1D運動距離が約3倍長かった.また,熱処理なし試料では格子間原子集合体の数密度が低くサイズが大きい傾向が見られた.標準試料では,熱処理により何らかの不純物が導入され,格子間原子集合体の形成・成長,および1D運動に影響している可能性が考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の計画通りに進行しており,特に問題はない.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実験した試料とは別に4種類の銅(公称純度 3N,4N,5N,6N)について,『標準試料』と『熱処理なし試料』を作製し,超高圧電子顕微鏡を用いた電子照射その場観察により格子間原子集合体の1D運動挙動を調査し比較する.また,化学分析と二次イオン質量分析法(SIMS)を用いて,入手したインゴット試料に最初から含まれている不純物と熱処理により導入される不純物を同定することを試みる. また次年度より第二のサブテーマにも取り組む.銅に形成される格子間原子集合体にはプリズマティック型とフランク型の2種類がある.前者は1D運動できるのに対して後者はその構造上1D運動できない.微小な格子間原子集合体の型を同定する方法は確立されていない.第二のサブテーマでは超高圧電子顕微鏡による電子照射で微小な格子間原子集合体を導入し,通常型の透過電子顕微鏡を用いていくつかの回折条件で集合体の像を撮影し,像の可視・不可視から格子間原子集合体の型判定を行うことを試みる.
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Causes of Carryover |
当初の計画は今年度に『電解切り取りアタッチメント』を購入する予定であったが,前年度末に他の研究課題でこれが必要となって別の予算で購入した.そのため今年度科研費で購入する必要がなくなり未使用額が発生した.一方で,熱処理で導入される不純物を同定するために,当初の計画より多くのSIMS分析を行う必要があることが明らかとなった.上記の未使用額は主としてSIMS分析料金に充当する計画である.
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Research Products
(1 results)