2021 Fiscal Year Annual Research Report
環状有機カチオンへの求核付加における立体化学逆転現象の機構解明と不斉合成への応用
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19K05478
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
菅 誠治 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (50291430)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カチオンプール法 / イミニウムイオン / 立体化学 / 求核剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、自らが開発した「インダイレクトカチオンプール法」を用いて、ピペリジン由来(6員環)のN-アシルイミニウムイオンの立体配座をNMRではじめて直接観測することに成功するとともに、求核剤の違いにより真逆な立体化学をもつ化合物が高選択的に生成する非常に不思議な現象を見出してきた。さらに本研究課題においては、昨年度までに、ピロリジン由来(5員環)のN-アシルイミニウムイオンの創製にはじめて成功し、その求核剤との反応における立体選択性を調査したところ、ピペリジン由来のものと同様に、求核剤の違いにより真逆な立体化学をもつ化合物が高選択的に生成することがわかった。今年度は様々な位置に置換基をもつ5員環N-アシルイミニウムイオンのNMRによる直接観測を行うことに成功し、6員環と同様にこのカチオンも低温下ではすべて単一の立体配座をもつことがわかった。さらに、N-アシルイミニウムイオンの対イオンが選択性に及ぼす効果、N-アシルイミニウムイオンと求核剤の反応の遷移状態計算等を組み合わせて、求核剤との反応の立体選択性の逆転現象の全容をほぼ理解することができた。また、1つのアキラル化合物を出発として4種類の光学的に純粋な化合物の不斉合成を試みた。具体的には、アキラルな化合物のエナンチオ選的脱プロトン化とSPh基の導入による「インダイレクトカチオンプール法」の前駆体合成、光学的に純粋なものとするための再結晶、および本研究の主題である立体化学の逆転現象を組み合わせて、4つの各エナンチオマー純品で得る方法を開発した。
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