2021 Fiscal Year Research-status Report
光照射したチオシリケート発光材料におけるEu発光中心の局所状態観察
Project/Area Number |
19K05492
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
小林 義男 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (30221245)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 輝尽発光材料 / フォトルミネセンス / Eu / メスバウアー分光 / 内部転換電子 / 量子収率 |
Outline of Annual Research Achievements |
Euをドープした輝尽発光材料は、高い発光効率の可視光ルミネッセンスを示し、長時間の残光発光を有する。残光現象は、光励起した電子が伝導帯に遷移した後、近くの空孔にトラップされ、時間をかけて基底状態に戻ると考えられているが、Euの詳しい電子状態については理解に至っていない。本年度は、BaFBr:Euを試料として、光照射下におけるEuの励起状態と準安定状態の電子配置とその生成メカニズムを解明することを目的とした。 BaFBrにEuをドープするとEuはBaサイトを置換して、バンドギャップにEuによる新たなエネルギー準位3.2eVと2.1eVが導入し、この準位への電子の遷移で発光すると考えられている。Baに対するEuの原子数比をxとして、Ba(1-x)Eu(x)FBr試料を作製し、X線回折、発光量子収率、151Euメスバウアースペクトルの測定を行なった。EuBr3を出発物質として調製した試料は、XRDでは母材BaFBrの結晶構造と大きな違いがなく、EuがBaを置換していると考えた。量子収率測定の結果からはバンドギャップ3.2eV(390nm)に相当する発光は見られたが、2.1eVに相当する590nmの発光は見られなかった。151Euメスバウアースペクトルでは、Eu(II)の吸収ピークは見られず、Eu(III)のみのピークがあらわれた。EuBr2を出発物質として作製した試料の量子収率の結果から、390nmと590nmの発光が確認できたが、メスバウアースペクトルからは Eu(II)のピークは見られなかった。透過法では、Baによるガンマ線吸収の影響が原因であるため、内部転換電子メスバウアー分光法(CEMS)を用いて測定を行う必要がある。Euの内部転換係数αは28であり、高い収率で内部転換電子を放出する。光照射前後のEuの価数を調べるためには、表面が観測できるCEMSが最適な方法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Baチオシリケートと同様にEuをドープした輝尽発光材料を作製することには成功している。透過法によるメスバウアースペクトルでは、バルクの情報が支配的となり、表面におけるEuの価数についての知見をえるのは難しい。内部転換電子メスバウアー分光法(CEMS)を用いて測定を行う必要がある。Euの内部転換係数αは28もあり、高い収率で内部転換電子を放出する。この測定手段は、我々が開発しているガスフロー型平行平板電子なだれ式検出器の技術を用いれば十分に光照射前後のEuの価数を調べることができる。現在、Ba(1-x)Eu(x)FBr試料を組み込んだCEMSを作成している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
Euを添加したチオシリケートならびにイメージングプレートで使われる臭化フッ化バリウムの発光機構を解明するためには、バルク全体を観測する透過型メスバウアー分光と表面の情報を得ることが可能な内部転換電子メスバウアー分光法(CEMS)の両方を比較することが重要である。過去に用いられていた検出器を参考にCEMS検出器の作製はすでに開始しており、高い計数効率を得るためカウンターガスの圧力や流量などの最適化を今後進めていく計画である。
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Causes of Carryover |
メスバウアースペクトルの速度軸を校正するために必要な57Coメスバウアー線源(Ritverc社製、ロシア)を日本アイソトープ協会を通じての購入することを予定していた。その後、ロシアによるウクライナ侵攻などの国際情勢の変化により、購入に関して実施できるかどうかが不透明になったために次年度使用額が生じた。
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