2019 Fiscal Year Research-status Report
Direct mass spectrometry of organic nanoparticles in air by an enhanced photodesorption/ionization method on nanostructures
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19K05557
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松尾 保孝 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (90374652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大須賀 潤一 大阪大学, 理学研究科, 特任研究員(常勤) (10817232)
古谷 浩志 大阪大学, 科学機器リノベーション・工作支援センター, 准教授 (40536512)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プラズモン / ソフトイオン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微量な試料となる大気中ナノ粒子の有機物の“直接”質量分析を行うために必要となる、ナノ粒子を直接捕集し、かつ有機物をフラグメント化させずにレーザー脱離・イオン化(ソフトイオン化)する高効率なイオン化分析チップの開発を行う。具体的には、シリコン三次元ピラー構造表面に数十nmのポーラス構造と、貴金属ナノ粒子に生じる局在表面プラズモンの光アンテナ効果による電場増強を組み合わせた新規なソフトイオン化基板を開発し、大気中ナノ粒子における低分子有機物の高効率質量分析を行う。また、大気中ナノ粒子を捕集する多段インパクター(Micro Orifice Uniform Deposition Impactor:MOUDI)に作製した分析チップを取り付けることで、ナノ粒子捕集から質量分析までをワンチップ上で行えるシステムを構築し、大気中ナノ粒子の迅速分析の実現を目指す。 今年度は、n型シリコン基板上にフォトレジストで直径数ミクロン程度の円形パターンを作製し、ドライエッチング装置にて高さ数ミクロンの円柱形状を作製した。また、目的とする円錐構造を作成するために、ドライエッチングの出力、ガス流量、経時的な出力とガス流量の変動による形状制御性について検討し、必要となるテーパー角度制御性についての検討を行った。その結果、円錐形状作製のためにはレジスト膜厚およびレジスト形状についても加工を行う必要があることが分かった。また、作製した円柱を持つ基板をフッ酸/エタノールの混合溶媒中にて電解を行い、円柱構造を含めて基板表面全体に数10nm~100nm程度のナノポーラスを形成した三次元ナノポーラスシリコン基板を作製することに成功した。 また、本形状チップへレーザー照射しても構造が破損しないことや多段式インパクターへ取り付け可能なサイズであることを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微細構造作製に関しては順調に進行しており、順次質量分析評価を進める段階にある。
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Strategy for Future Research Activity |
作製された分析チップの構造制御と形状表面への金ナノ粒子の吸着制御を進める。 一方、局在表面プラズモンに応答する波長532nmのパルスレーザー光を照射し、超高分解能MALDI-TOF-MSを使って、MALDIのマトリックスであるCHCAや大気エアロゾル中に多く存在するジカルボン酸や脂肪酸などをサンプルとしてイオン化効率について検証を行う。 また、シリコンより表面にアルミナやチタニアを有することでイオン化効率化が増加する傾向が報告されていることから、ポーラス構造へ数nmオーダーで成膜可能な原子層堆積装置を用い、局在場プラズモンが完全に減衰しない厚さ2nm程度のアルミナあるいはチタニアでデバイスを被覆した分析チップを作製し、イオン化効率やナノ粒子の捕集効率などを検討する。また多段式インパクタへのチップ装着を行い、大気ナノ粒子の捕集テストを行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により当初の予定していた打ち合わせ(出張)が取りやめになった。および、装置利用の制限によるデバイス作製が生じたこと、多段式インパクタの納期が延びて次年度納品となったために次年度使用額が発生した。なお、デバイス作成自体は当初利用予定の装置使用料よりも少ない金額で達成されており、計画自身についての遅れは生じていない。繰り越し額は研究を加速するための装置利用料と多段式インパクタの購入などに充当する予定である。
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