2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of an Effective System for Oxidative Desulfurization of Motor Fuels
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19K05563
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
村田 聡 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (70219921)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 酸化脱硫 / ジベンゾチオフェン / 分子状酸素 / ルテニウム触媒 / ビピリジン |
Outline of Annual Research Achievements |
エチルベンゼン中、塩化ルテニウムを触媒とするジベンゾチオフェンの酸素分子を用いる酸化について検討を行った。この反応では最初に溶媒であるエチルベンゼンが1-フェニルエチルペルオキシドへと酸化され、この過酸化物がジベンゾチオフェンを酸化することでスルホンが生成する。最終的には過酸化物はアセトフェノンへと変換される。このアセトフェノンの生成量は多い場合には30%近くに達する。この反応を軽油の酸化脱硫に模した場合、エチルベンゼンは軽油本体に相当し、多量のアセトフェノンの生成は軽油の質の劣化を意味する。そこで、アセトフェノンの生成量を抑制できる条件の探索を行った。令和2年度の研究において、ピリジン系配位子の添加効果について検討を行ったところ、単座の配位子であるピリジン、2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジンではあまり効果はないが、二座の配位子である2,2’-ビピリジルを添加した場合、アセトフェノンの副生量は大幅に低下した。塩化ルテニウムに対し0.5~等倍量のビピリジルを添加した場合に最も効果的でアセトフェノンの副生量は1.5%程度まで抑制できた。 ピリジン系配位子の効果についても考察を行っており、単座配位子の効果は2,6-ジメチルピリジン<2-メチルピリジン<ピリジンの順であったことから、配位子の効果はルテニウム触媒への配位の強さに関係していること、配位子を2倍以上添加した場合にはエチルベンゼンそのものの酸化があまり進行しなかったことから、配位が強すぎる場合も反応が進行しないことを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画は①触媒+芳香族アミン類の検討、②硫黄化合物の多様性、③溶媒の検討、④吸着剤の検討の四項目からなっている。 ①の触媒については、ルテニウム触媒を用いる反応系については反応条件の最適化はほぼ終了している。マンガンやコバルトのようなルテニウムより安価な金属の使用については検討を開始しており、反応が進行することは確認しているが、条件の最適化を継続して行う必要がある。②のその他の硫黄化合物の酸化については令和3年度の研究において実施する予定である。③の溶媒については、エチルベンゼン以外の溶媒についても使用可能性を検討しており、デカリンやクメンの使用が可能であることを確認している。条件の最適化については令和3年度実施予定である。④の吸着剤の検討については、前年度に吸着剤の使用による硫黄酸化生成物の除去については、吸着剤を用いる方法よりも抽出法の方が適切である旨確認しており、この検討を継続する。 以上のように研究はほぼ予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究において、反応系中にピリジン系塩基を添加すると、溶媒酸化生成物であるアセトフェノンの収率が低下し、その割合はピリジン系塩基の構造、添加量に大きく影響されることを見いだした。最も良い条件は、二座配位子であるビピリジンを塩化ルテニウム触媒に対し0.5~1倍等量使用することで、これにより溶媒酸化生成物の生成量を2%以下に押さえ込むことが可能となった。 これを受けて、次年度は① ルテニウムより安価なマンガン、コバルトを用いる反応系の開発、② DBT以外の硫黄化合物の酸化反応、特にメチル置換DBTやベンゾナフトチオフェンのような難脱硫性の化合物の反応条件についての検討、③ エチルベンゼン以外の炭化水素系溶媒の検討、例えば、クメンやデカリン等、④ ビピリジン以外の効果的な配位子の模索、特により安価な一座配位子のピリジンの検討、の4項目について検討を行い、令和2年度の成果の拡張を図る。 酸化生成物からの硫黄化合物の除去には、最初の申請書では吸着法を用いることを計画していたが、令和元年度の実験では溶媒抽出がより効果的であることを確認している。しかしながら、この実験での硫黄化合物の酸化法は塩化鉄-過酸化水素によるものだったので、本実験での条件とはやや異なる。そこで、塩化ルテニウム-含窒素配位子-分子状酸素-炭化水素系溶媒の反応系で硫黄化合物の酸化を行い、生成物からの硫黄化合物除去について検討を行う。令和元年度の研究ではアセトニトリルが最適であったが、次年度は探索する溶媒の範囲を広げて検討を行う。N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール等を候補として考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、研究を実施できない期間があったことから、物品費の一部が未使用であった。また、同じくコロナ禍の影響で発表予定の学会が中止となったため旅費を使用しなかった。これらの理由により研究費に残額が発生した。 残額については、令和3年度に物品費および学会発表のための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)