2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K05762
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安部 公博 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (10748940)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 枯草菌 / 細胞分化 / serine recombinase / 部位特異的DNA組換え / 胞子形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、1)枯草菌における細胞分化記憶細胞の作製、2)枯草菌類縁菌 Paenibacillus polymyxaの細胞分化過程の解析、の2点を行った。
1)について。枯草菌の代表的な細胞分化の1つである胞子形成について着目し、胞子形成へ細胞分化したことをゲノム上に記録する菌株の構築を試みた。本菌株は、胞子形成プロモーター下流に部位特異的DNA組換え酵素SprA遺伝子を配置したコンストラクトと、蛍光タンパク質遺伝子をSprAの2つ標的サイト(attP及びattB)によって挟んだコンストラクトを含む枯草菌株である。本菌株が胞子形成に入ると、SprAが発現し、蛍光タンパク質遺伝子前後の標的サイトで不可逆的な部位特異的DNA組換えを起こすことで、胞子形成に入ったことをゲノム上に記憶する。しかしながら、多数のDNA断片を組み合わせたコンストラクトの作製がうまくいかず、目的の枯草菌株の樹立には至らなかった。
2)について。in vivoゲノム記録法が枯草菌と異なる種でも利用できるかを今後検証するために、類縁菌であるP. polymyxaの胞子形成について検証を行った。その結果、胞子形成過程の細胞形態や成熟胞子の形態は枯草菌とは異なるものの、胞子形成特異的遺伝子やそのプロモーター、及び転写レギュレーターは高く保存されていることが明らかとなった。このことから、P. polymyxaにおいても枯草菌と同じ手法で胞子形成記憶細胞が作製できると期待できる。また、これまでP. polymyxaの胞子形成についてあまり報告がなかったが、本研究により、本菌の生態を理解する上での基礎的な知見を得ることが出来た。上記の研究成果は、The Journal of General and Applied Microbiology誌で公表された(Abe et al, 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年までに胞子形成等の細胞分化記録細胞を樹立する計画であったが、達成できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
枯草菌における細胞分化記録細胞を構築し、これを利用して枯草菌集団内における細胞分化状態の変遷を解析する。枯草菌における種々の分化細胞の内、特に、分化細胞特異的遺伝子のon/offが明瞭である胞子形成について、優先的に研究を進める。
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Causes of Carryover |
2021年度の未使用額は、コロナウイルス流行により、計画していた出張が中止になった為と研究計画の進捗が遅れた為に生じた。次年度使用額は、研究計画遂行のための試薬・備品購入と学会・論文発表等の研究成果の公表に使用する。
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