2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05814
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石田 丈典 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 講師 (30573373)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不凍タンパク質 / アスベスト / アスベスト結合タンパク質 / ファージディスプレイ法 / 無機結晶結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
アスベストは、肺ガンや悪性中皮腫などを引き起こす。アスベストに結合するタンパク質を発見し、アスベストの検査方法に応用することに成功している。この検査方法を世界標準化するためには、毒性の異なるクロシドライトとアモサイトを区別する必要があり、そのためにタンパク質の特異性をさらに向上させる必要があった。アンチフリーズタンパク質(AFP)は、氷に結合するユニットが繰り返した構造をもつ天然の無機結合タンパク質である。本研究では、AFPの繰り返しユニットの変異ライブラリーを構築し、進化工学を利用することで、これまでにない高い特異性を持ったアスベスト結合タンパク質を作製し、固体表面を高度に認識するタンパク質を創製する新たな方法論を確立することを目指した。 不凍タンパク質として、Tenebiro molitor由来の不凍タンパク質(TmAFP)を用いた。TmAFPの第37番目から第61番目のアミノ酸領域の平面構造内に配置されている第39、41、51および53番目のスレオニン残基をランダムなアミノ酸に置換した変異ユニットを提示したファージライブラリーを作製し、角閃石アスベストに結合する変異ユニットのスクリーニングを行なった。昨年度では、アモサイトに結合する変異ユニット(アモサイト結合ユニット)を数種類同定することができ、そのうち2種類のアモサイト結合ユニットの組換えタンパク質の作製に成功した。今年度は、これら2種類のアモサイト結合ユニットを蛍光標識して、アモサイトに対する結合性を評価した。また、これまでM13ファージに変異ユニットを提示したファージライブラリーを使用してスクリーニングを行ってきたが、今年度は新たにT7ファージを用いた変異ユニットライブラリーの作製を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度では、M13ファージを用いた変異ユニットライブラリーを用いて、アモサイト結合ユニットを数種類同定し、そのうち2種類のアモサイト結合ユニットの組換えタンパク質の作製に成功した。今年度は、これら2種類のアモサイト結合ユニットを蛍光標識して、アモサイトに対する結合性を評価したところ、従来のアスベスト結合タンパク質(H-NS)よりも高い結合性を有していることがわかった。また、これまではM13ファージに変異ユニットを提示したファージライブラリーを使用してスクリーニングを行ってきたが、今年度は新たにT7ファージを用いた変異ユニットライブラリーの作製を行なった。この変異ユニットのT7ファージライブラリーの作製に成功し、さらにクロシドライトに結合するファージを取得することができた。アモサイトとクロシドライトのそれぞれに結合する変異ユニットを取得できたことから、概ね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
アモサイト結合ユニットを1つ含む組換えタンパク質を作製することができたが、2または3ユニットを含むTmAFPの組換えタンパク質の作製を行なう。単一ユニットと再構成(2または3ユニットを繰り返した)TmAFPの組換えタンパク質を比較検討することで、結合力や特異性がどのように変化するか検討する。これまで同定したアモサイト、クロシドライトの結合ユニットの配列や結合ユニット数を調整することで、固体表面を高度に認識するタンパク質の作製を試みる。
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Causes of Carryover |
【次年度使用額が生じた理由】予想よりも消耗品の使用量が少なく済んだため。また,英語論文についての校正費が今年度末までに投稿準備ができなかったため計上しなかった。 【次年度使用額の使用計画】2または3ユニットを含むTmAFPの遺伝子は、通常のクローニングで作製することが難しいため、合成遺伝子で作製する必要がある。その合成遺伝子の作製費用として使用する。
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