2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of mechanism for cytochrome c dessociation based on fine synthesis of phospholipid cardiolipin peroxide
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19K05847
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
安部 真人 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (30543425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河崎 悠也 九州大学, 先導物質化学研究所, 学術研究員 (00781999)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カルジオリピン / 過酸化物 / シトクロムc / リン脂質 / アポトーシス / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
カルジオリピンは、ミトコンドリア内膜に局在する陰性リン脂質であり、内膜中の総リン脂質の約25%を占めている。ミトコンドリアは酸化的リン酸化とアポトーシス誘導の2つの機能を持ち、それらはカルジオリピンの過酸化によって制御されると考えられている。即ち、ミトコンドリア内膜ではカルジオリピンは呼吸鎖の補酵素シトクロムcとの特異的な複合体を形成してシトクロムcの遊離を防いでいる。このカルジオリピン-シトクロムc複合体は、酸化ストレス条件によってカルジオリピンの脂肪酸部が過酸化を受けることで解消し、カスパーゼカスケードの引き金を引くとされている。しかし、過酸化カルジオリピンが本当にシトクロムcとの親和性を低下させるのかは不明である。 そこで本研究ではカルジオリピンの過酸化にともなうシトクロムc遊離の分子機構を明らかにすることを目的とした。このために過酸化カルジオリピンの精密合成を行い、シトクロムcとの複合体形成能を評価することを計画した。 本年度は、過酸化カルジオリピンと同様の部分構造を有する過酸化ホスファチジルグリセロールをモデル化合物に選択して、その全合成を行った。具体的には研究代表者独自の手法によって合成したリン脂質中間体に対する過酸化脂肪酸の導入について検討した。 その結果、酵素合成において過酸化部位の保護に多用されるメトキシプロペニル(Mxp)基を用いると、塩基性条件によるリン酸エステルの脱保護の際に、競合してヒドロペルオキシ基の脱離が進行することが判明した。そこで合成経路を再構築し、リン酸エステルの脱保護を終えてから過酸化脂肪酸の導入を行うこととした。これにより、過酸化ホスファチジルグリセロールの初めての全合成を達成した(論文準備中)。本手法は過酸化カルジオリピンの合成で想定される技術的課題を克服したものと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における技術的な重要課題である「リン脂質に対する過酸化脂肪酸の導入」に関して大きな進捗が得られた。その過程では、当初の予想に反して、合成最終盤のリン酸エステル部の脱保護に競合して過酸化部位が脱離してしまうことが新たな課題となった。しかし、合成経路の再構築と反応条件の最適化によって克服できたため、進捗状況に影響は生じなかった。加えて、上記の脱保護反応の際に生じる副生成物は、過酸化カルジオリピンの二次酸化性生成物であるケテン類であることが推察される。従って、この副生成物についても構造同定の上で活性試験の対象として用いる展開が可能になった。シトクロムcを対象とした結合親和性の評価系は確立済みであることから、本研究課題の最終年度に向けて十分に準備が整ったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに本研究を通じて確立できた過酸化脂質の合成方法を用いて当初計画の過酸化カルジオリピンの類縁体合成を完了させる。加えて、非天然型の過酸化カルジオリピンを研究分担者の河崎博士と連携して準備し、構造活性相関研究を充実する。その上で、カルジオリピン類および過酸化カルジオリピンのシトクロムcとの結合親和性の評価を実施する予定である。結合親和性の評価にはリポソーム共沈法および表面プラズモン共鳴法を併用することとしており、どちらについても予備実験を終えている。
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Causes of Carryover |
当該年度は研究計画上の最難関の課題である「過酸化カルジオリピンの化学合成」の確立に注力した。これは、当初計画の想定と異なり、従来の合成方法に改良の必要が生じたことに由来している。このため、結合親和性の評価に用いる機器および試薬類の購入を最終年度に実施するよう計画を変更した。結果として、当該年度内に上記合成方法の確立ができたため、次年度使用額は計画通り過酸化カルジオリピンとシトクロムcとの結合親和性の評価のための機器および試薬類の購入に充当する予定である。
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Research Products
(2 results)