2020 Fiscal Year Research-status Report
炭疽菌およびセレウス菌の芽胞・栄養型細胞に抗菌活性を有する食品添加物の多面的活用
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19K05890
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
奥谷 晶子 国立感染症研究所, 獣医科学部, 主任研究官 (60392320)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炭疽菌 / 芽胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現在芽胞菌の増殖抑制に使用されている食品添加物で炭疽菌やセレウス菌に対して抗菌活性を有する化合物を用いて、通常用いられる環境負荷の高い化学剤に代わる抗芽胞薬への応用や、既存の抗生物質に代わる抗菌作用を期待した抗菌薬への応用につながるための「人にも環境にも負荷の少ない殺芽胞薬・抗菌薬としての各種天然由来食品添加物の多面的な利用・応用へと発展させるための基礎的な知見を得ることを目指す」ことである。本研究では、食品添加物として使用されている各種天然由来抗菌性化合物による炭疽菌とセレウス菌芽胞に対する抗発芽作用と、野生株・薬剤耐性炭疽菌および 食中毒・院内感染セレウス菌に対する栄養型細胞の増殖抑制活性の抗菌作用機序を明らかにすることが目的である。食品添加物として実際に食品に使用されているホップ抽出物(キサントフモール)や甘草抽出物、グリシン、ショ糖エステル、シクロデキストリンおよび緑茶カテキンは耐熱性芽胞菌の増殖抑制に有効であることが報告されている。このうち特に芽胞増殖に対して効果の高かったグリシンおよび甘草抽出物を用いて炭疽菌g芽胞および食中毒や院内感染で分離されたセレウス菌芽胞を用いて「芽胞からの発芽の抑制」と「発芽後の栄養型細胞の増殖抑制」に分けて活性の検証を行った。その結果、検証した全ての化合物で芽胞発芽後の栄養型細胞の増殖抑制および芽胞からの発芽の抑制が認められた。具体的には、炭疽菌芽胞を液体培地と上記化合物に混合させ培養を行った。37℃で一定時間(0~24時間)反応させて芽胞からの発芽を濁度低下の割合で確認し、各化合物の殺芽胞最小有効濃度および最小発育阻止濃度を検証した。また、炭疽菌および食中毒・院内感染セレウス菌に対して有効な抗菌剤と併用し、抗菌剤の最小発育阻止濃度の低下と併用効果を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各化合物に対する炭疽菌およびセレウス菌側の因子を検索するためのRNA-seqを計画していたが、新型コロナ感染症の発生による実験環境の整備の遅れ、試薬の調達不備が発生し、計画通りの実験実施に至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
グリシンおよび甘草抽出物と相互作用する炭疽菌およびセレウス菌遺伝子を網羅的に明らかにするため、発芽初期、増殖開始期、対数増殖期、静止期の各種化合物混合培養液から 各菌のmRNAを抽出して増殖抑制に関わる遺伝子を網羅的に検証する。
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Causes of Carryover |
使用を計画していた消耗品および各化合物(試薬)の消費が予想よりも抑制できたことから本来計上していた金額を使用しなかったため。 今年度において残額分を使用予定である。
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