2020 Fiscal Year Research-status Report
大麦若葉由来葉緑体チラコイド膜糖脂質の炎症性腸疾患抑制作用の解析
Project/Area Number |
19K05936
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
奥 和之 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (40549797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 富弘 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (00200189)
宮田 恵多 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (90736290)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大麦若葉末 / チラコイド膜糖脂質 / 炎症性腸疾患 / 培養細胞 / 炎症性サイトカイン / 線虫(C.elegans) |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性腸疾患(IBD )は,ストレスなど外的因子に対する腸管自律神経あるいは腸管免疫の異常による炎症メディエーターを介した腸管の微小循環障害・組織破壊によると考えられる.本研究では,植物葉緑体由来チラコイド膜糖脂質に注目し,培養細胞を用いた腸管炎症モデルによる大麦若葉末の炎症性腸疾患抑制効果を検討した.1)培養細胞を用いた腸管炎症モデルとして,ヒト腸管上皮様細胞(Caco-Ⅱ)と炎症メディエーターとしてTNF-αによる炎症抑制評価系を用いて大麦若葉の炎症性腸疾患抑制効果を調べた.大麦若葉末抽出エキスより分画した糖脂質画分と水溶性画分を,それぞれ培養細胞を用いた腸管炎症モデル添加したところ,大麦若葉由来糖脂質画分で炎症性サイトカイン(IL-6,IL-8)の強い分泌抑制が確認された.また抗炎症性サイトカインIL-10分泌は大麦若葉末の水溶性画分で確認された.さらに遺伝子レベルでの解析より,糖脂質画分でTNF-α処理後のIL-4,IL-6およびIL-8遺伝子発現が抑制された.この成果は川崎医療福祉学会誌,30 (1),279-283,2020.に掲載された.2)線虫(C.elegans)を用いた腸管炎症モデルを作製し,炎症抑制作用を検討した.同調化した線虫をTNBS(トリニトロベンゼンスルホン酸)にて腸管炎症させたところ,大麦若葉由来糖脂質の添加により炎症性サイトカインIL-17遺伝子(ilc-17.1)の発現を強く抑制した.以上の成果は,大麦若葉末由来糖脂質は,TNF-α誘導による炎症性サイトカイン分泌を抑制することは,炎症におけるサイトカインストームの抑制とともに,大麦若葉末の水溶性画分(ポリフェノール類が含まれる)が制御性B細胞を介した抗炎症性サイトカインIL-10分泌に関与していることが示唆され,大麦若葉由来チラコイド膜糖脂質が炎症性腸疾患抑制に有効であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
炎症性腸疾患の予防として,植物葉緑体由来チラコイド膜糖脂質に注目し,培養細胞を用いた腸管炎症モデルによる大麦若葉末の炎症性腸疾患抑制効果を遺伝子レベルでの解析が進んでいる.コロナ禍の影響によりCaco-2細胞や細胞培養・遺伝子解析関係の消耗品の入手が難しく時間がかかるため,進捗状況がやや遅れている.そこで線虫(C.elegans)を用いた腸管炎症モデルを作製し,大麦若葉由来糖脂質の炎症抑制作用研究を実施した..
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Strategy for Future Research Activity |
大麦若葉由来糖脂質の炎症性腸疾患抑制作用について,1)関与成分の単離・構造解析と単離精製した関与成分の抑制作用の確認を行う.2)培養細胞(Caco2)を用いて,遺伝子解析によるサイトカインカスケードや転写因子の発現への影響を検討し,大麦若葉由来糖脂質の炎症抑制作用メカニズムの解明を行う.また,3)遺伝子発現におけるエピジェネティクス解析を行い,大麦若葉由来糖脂質の関与を明らかにする.さらに大麦若葉由来糖脂質粗分画画分を多量に調製し,4)炎症性腸疾患モデル動物(TNBS誘発マウスクローン病モデルやDSS誘発マウス海洋)や消化管モデルとして線虫(C.elegans)を用いた炎症性腸疾患抑制作用を検証する予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により国内でのCaco-2細胞入手が困難となり、ATCCなどからの入手に時間がかかったこと、細胞培や遺伝子解析関係の消耗品の入手にも製造が追いつかず入手に時間がかかり、スムーズな研究が遂行できなかったため。 使用計画として、培養細胞(Caco2)を用いた遺伝子解析によるサイトカインカスケードや転写因子の発現への影響を検討や遺伝子発現におけるエピジェネティクス解析を行うための細胞、試薬などの消耗品の購入に使用する。また炎症性腸疾患モデル動物や消化管モデルとして線虫(C.elegans)を用いた炎症性腸疾患抑制作用の検証に使用する予定である。
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