2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K06066
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
内野 彰 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 上級研究員 (20355316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋本 千春 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (50414876)
岩上 哲史 京都大学, 農学研究科, 助教 (00761107)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 除草剤抵抗性 / 多剤抵抗性 / ALS阻害剤 / ACCase阻害剤 / ヒメタイヌビエ / イヌビエ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)除草剤反応試験では、昨年採取したイヌビエ5地域17個体の自殖後代のうち、4地域13系統についてシハロホップブチル抵抗性が確認された。これらはいずれもACCase阻害剤のシハロホップブチルおよびメタミホップに抵抗性を示したが、ALS阻害剤のペノキススラムおよびビスピリバックナトリウム塩には感受性を示した。 (2)作用点酵素の除草剤感受性解析では解析結果が変動したため、手法の再検討を進めた。 (3)解毒代謝酵素阻害剤解析では、シトクロムP450阻害剤(ピペロニルブトキシド、マラチオン、フェニトロチオン)処理の影響を、多剤抵抗性ヒメタイヌビエEcf27で調査した。シハロホップブチルに対する薬量反応では、阻害剤の影響がほとんど認められなかったが、ペノキススラムに対する薬量反応では、P450阻害剤によって薬剤感受性が上昇する傾向が認められた。 (4)代謝産物の解析では除草剤吸収量のデータが変動したため、界面活性剤の影響を検討しつつ手法の再検討を進めた。 (5)遺伝子解析では、昨年のRNA-seq解析においてEcf108のシハロホップブチル抵抗性への関与が期待された酵素(CBR1)遺伝子をイネカルスに形質転換したところ、カルスにシハロホップブチル抵抗性が付与された。イネのオーソログをイネカルスで過剰発現させた場合にもシハロホップブチル抵抗性が認められたため、本遺伝子のシハロホップブチル代謝機能は種間で保存されていると考えられた。ヒメタイヌビエ、イネともに本遺伝子の類似遺伝子(CBR2)がゲノム上にタンデムに並んでいる。この遺伝子についてもイネカルスで過剰発現させたが、シハロホップブチル抵抗性は付与されなかった。イネのCBR1およびCBR2についてそれぞれCRISPR/Cas9システムによりbiallelicな遺伝子破壊株を作出し、種子採取に向けて栽培を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交差抵抗性の解析および解毒代謝酵素阻害剤の影響解析は計画通り順調に進んだ。作用点酵素の除草剤感受性解析および代謝産物の解析では、手法を検討しつつデータの精査を進めたが、概ね計画通りと考える。遺伝子解析では、機能解析によりシハロホップブチルを代謝する新規遺伝子を見いだすなど、当初の計画を超えて大きく進展している。これらの結果を総合すると、計画以上の進捗状況と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
交差抵抗性解析では多剤抵抗性系統を中心に交差抵抗性解析を進め、防除に利用可能な有効除草剤成分を明らかにし、実用場面の対策に利用可能な情報を得る。作用点酵素活性測定および解毒代謝解析では、再検討した手法によりヒメタイヌビエおよびタイヌビエ系統の解析を進める。解毒代謝酵素阻害剤試験では、再現性を確認しつつヒメタイヌビエ系統で詳細な解析を実施する。遺伝子解析ではシハロホップブチル代謝遺伝子の特性解析を進める。イネ科植物では、CBR1およびCBR2は主にCBR1/CBR2のヘテロダイマーとして内生基質に作用することが知られているため、イネにおける各遺伝子の欠損変異体におけるシハロホップブチル感受性を評価して、シハロホップブチル代謝における機序を明らかにする。また、CBR1およびCBR2を二重で高発現させたイネを作出し、CBR1単独発現の場合と比較する。組換えタンパク質発現では、大腸菌発現系では十分な発現が認められないため、無細胞翻訳系について検討する。
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Causes of Carryover |
標的酵素の活性測定にかかる経費が予定より少なく、次年度の経費および遺伝子解析費として使用する。
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Research Products
(2 results)