2019 Fiscal Year Research-status Report
タケ・ササ類の植物ケイ酸体の形態的特性に基づく土壌生成メカニズムの解明
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19K06155
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
梅村 光俊 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (00737893)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 植物ケイ酸体 / 粒径分布 / シルト |
Outline of Annual Research Achievements |
タケ・ササ類が生成する植物ケイ酸体は、様々な粒径をもつ生体鉱物であり、植物の枯死・分解過程を経て土壌中に供給されると、土壌粒子の一部として機能する可能性がある。本研究では、竹林・ササ地における土壌生成メカニズムを、植物ケイ酸体の形態的特徴から明らかにすることを目的とした。 初年度は、北海道内でチシマザサあるいはオクヤマザサが自生するササ地4地点を対象とし、表層土壌(深さ0~5 cm)中の植物ケイ酸体について、土性の粒径分布に従った定量評価技術の開発を行った。具体的には、土壌試料を有機物分解および脱鉄処理し、土壌粒子を砂(200 μm~2 mm、100~200 μm、50~100 μm)、シルト(20~50 μm、2~20 μm)、粘土(2 μm未満)に分画した。これらの画分(粘土を除く)に比重分画法を適用し植物ケイ酸体を分離・抽出した。一方、この抽出画分の中には、植物ケイ酸体の比重に近い火山ガラスや結晶鉱物なども含まれているため、偏光顕微鏡を用いて300粒以上の粒子を同定・計数し、植物ケイ酸体の粒数率(または面積比率)を求めることで重量補正を行った。その結果、植物ケイ酸体は、シルト画分に比較的多く含まれ、特に粗シルトにあたる20~50 μmに含まれる植物ケイ酸体粒子の90%以上がササ葉由来のファン型ケイ酸体であることが明らかとなった。本手法では、粘土画分の定量化においては技術的な課題が残ったが、シルト粒径以上の植物ケイ酸体量の定量化においては一定の成果を得ることができた。一方で、シルト粒径の中でも2~20 μmに含まれる微小な植物ケイ酸体粒子の同定においては、更なる精度向上の余地が認められたため、次年度以降は微分干渉システムを用いた偏光顕微鏡観察による同定精度の向上を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、本課題において最も核となる土壌中からの植物ケイ酸体の抽出・定量化技術の確立を優先して行った。土性の粒径分布に従って植物ケイ酸体の寄与率を示すという新たな評価手法を開発し、一定の成果を得られたことは本課題の目的達成のための重要な基盤を構築することができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目以降は、土壌中の植物ケイ酸体量の定量評価に向けて、分析技術の更なる精度向上を図る。また、土壌中に含まれる植物ケイ酸体の供給源を明らかにするために、タケ・ササ類の植物体の各器官に含まれる植物ケイ酸体について、粒径分布に従った定量評価を試みる。さらに、植物体から土壌への植物ケイ酸体の供給過程を把握するために、地上部・地下部器官の分解試験を実施する。
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Causes of Carryover |
初年度は、本課題の実施に先立って採取された北海道内広域におけるササ地群落の土壌試料を分析に使用することができたため、調査旅費の節減を行うことができた。また、それに伴い試料調整に必要な人件費も節減できたため、残額を次年度に繰り越すこととした。次年度は、土壌中の植物ケイ酸体の定量化技術の向上に向けて、植物ケイ酸体粒子のより高精度な顕微鏡観察を可能とする微分干渉システムの整備を行う。
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Research Products
(4 results)