2020 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム科学等の先端技術を活用したノリのプロトプラスト作成法の再興と簡便化
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19K06188
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
関 清彦 佐賀大学, 農学部, 講師 (00264151)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱 洋一郎 佐賀大学, 農学部, 教授 (00243999)
永野 幸生 佐賀大学, 総合分析実験センター, 准教授 (00263038)
川村 嘉応 佐賀大学, 農学部, 特任教授 (30601603)
後藤 正利 佐賀大学, 農学部, 教授 (90274521)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プロトプラスト / アガラーゼ / ポルフィラナーゼ / キシラナーゼ / マンナナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
ノリの迅速種苗化、新品種作出に貢献可能なノリプロトプラストの、ゲノム科学等の先端技術を活用した作成技術の再興と簡便化を図ることを目的とした。ノリにおいて多糖は、細胞間充填多糖であるポルフィラン、細胞壁構成多糖であるマンナンとキシラン、貯蔵多糖として紅藻デンプンが存在している。ノリ細胞壁を構成する多糖類(ポルフィラン、β-1,4-マンナン、β-1,3-キシラン)分解酵素生産菌を有明海泥土から単離し、新たに3株(S3株、K1株、H1株)を得た。ポルフィランの代替物として寒天、β-1,4-マンナン、β-1,3-キシランを誘導物質として、これら3株から生産させた酵素をノリ葉状体に作用させ、酵素のノリプロトプラスト作成能を評価した。 ノリ葉状体を、2%パパインにより処理後、S3株、K1株、H1株より得られたポルフィラナーゼ、β-1,4-マンナナーゼ、β-1,3-キシラナーゼを用いて細胞壁を溶解した。細胞壁溶解酵素液10 mL中に、各酵素が1 unit、0.5 M マンニトールを含む20 mM HEPES緩衝液(pH7.5)で調製し、120分作用させたところ、プロトプラスト形成が確認された。また、細胞間充填多糖であるポルフィランの分解酵素添加量を上昇させることにより細胞の分離時間が短くなり、細胞壁構成多糖であるβ-1,4-マンナナーゼおよびβ-1,3-キシラナーゼの添加量を増やすことにより、プロトプラスト形成効率が上昇した。 プロトプラスト形成能を有する分解酵素を取得することができたことから、ゲノム解析およびピキア酵母を用いた酵素遺伝子の大量発現による組換えノリ細胞壁多糖分解酵素の生産系が構築可能となった。来年度は、ノリの品種改良を目指した細胞融合および遺伝子導入のためのプロトプラスト作成の安定化・効率化を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の重点課題は、ノリプロトプラスト作成のための【ゲノム解析技術を用いた簡便な候補酵素の同定】【ノリ細胞壁多糖類分解酵素の精製・同定】【候補タンパク質の生産】であった。しかし、コロナウィルス問題、および昨年度解析した酵素のプロトプラスト形成能が確実であると評価できなかったことから、共同研究者と協議の結果、2021年度実施予定であったプロトプラスト作成実験を先倒して本年度実施し、今年度実施予定の課題は、次年度実施することにした。2021年度実施することにした課題については、2019年度において一部の酵素ですでに系を構築しており、実施に関して問題はないと考えている。また、本年度2021年度実施予定であったプロトプラストの作成に成功しており、最適化実験についても進行中である。2019年度より継続課題の【ノリ細胞壁多糖類分解微生物の探索】については、本年度、プロトプラスト作成に有用なポルフィラナーゼ、β-1,4-マンナナーゼおよびβ-1,3-キシラナーゼ生産菌を単離することに成功したため、課題達成とした。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロトプラスト作成に有用なポルフィラナーゼ、β-1,4-マンナナーゼ、β-1,3-キシラナーゼ生産菌を単離することに成功したため、【ゲノム解析】および酵素遺伝子の同定を継続して進める。【候補酵素タンパク質の生産】については、ピキア酵母を用いた発現系に加え、大腸菌発現系を構築し最適化を進める。【プロトプラスト作成の最適化】では、組換え精製酵素を用い、培養したノ リ葉状体、糸状体に対して作用させ、最適化・効率化をはかる。細胞壁分解酵素の組合せ、酵素反応条件、供与ノリの状態を詳細に調べ、最適な葉状体、糸状体プロトプラストの作成条件を決定する。 コロナウイルス問題の対応等で、2021年度実施予定であったプロトプラスト作成実験を先倒して2020年度実施し、2020年度実施予定の課題を2021年度に実施することにしたため、ゲノム解析、人工合成遺伝子作出費用等、経費のかかる研究が2021年度に実施されることになった。研究はおおむね順調に進展している。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス問題、および昨年度解析した研究成果の評価をふまえた共同研究者と協議の結果、2021年度実施予定であった研究課題を先倒して2020年度実施し、2021年度実施予定の研究課題を、2020年度実施した。そのため、ゲノム解析、人工合成遺伝子作出費用等、経費のかかる研究が2021年度に実施されることになった。
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