2019 Fiscal Year Research-status Report
同種貝殻由来のマガキ幼生付着誘起物質の探索に関する研究
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19K06189
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
サトイト シリルグレンペレズ 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (40363478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 朝美 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (80589870)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マガキ幼生の付着誘起物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
マガキは、世界中で養殖されている有用二枚貝である。本種は、幼生期に浮遊生活を送るが、幼生が付着期を迎えると適切な基盤で付着して成体へと成長する。本種幼生の付着は同種異個体からのケミカルシグナルが関与するとされているが、その付着誘起物質は未だ不明である。本研究では、本種幼生の付着メカニズムを解明するための一環として、本種貝殻由来の付着誘起物質の特定を目的としている。 2019年度では、貝殻に含まれる付着誘起物質を効率よく抽出する方法を確立するとともに、各種の分画方法を用いて活性物質の精製を目指した。まず、貝殻の塩酸抽出物及びEDTA抽出物の本種幼生に対する付着誘起効果を調べた結果、両者とも高い付着誘起活性を示した。しかし、塩酸抽出液に比べてEDTA抽出液の方がSDS-PAGEではタンパク質のバンドが明確に確認できるため、活性物質の精製実験はEDTA抽出液を用いて行った。 付着誘起物質について、限外濾過後、>50k画分をさらにゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex 200HR)を用いて精製した結果、259~2,293 kDaの画分がEDTA粗抽出液に匹敵する高い活性を示した。この259~2,293 kDaの画分について、タンパク質組成を確認するため、SDS-PAGEの適切なゲルの条件を現在検討中である。SDS-PAGEでタンパク質組成を確認後、活性物質の精製を進めて物質の同定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マガキ由来の付着誘起物質の精製について、現在はゲル濾過クロマトグラフィーによって得られた画分のうち、259~2,293 kDaの画分が特に高い付着誘起活性を示したため、この画分についてプロテインシーケンサー(PPSQ-33A)で末アミノ酸配列を分析している最中である。また本画分について、電気泳動で泳動する適切なゲルの条件を検討中である。当初の計画では、付着誘起物質の精製及び同定は2019年~2020年度の期間に終了させる予定であるので、おおむね順調に進展していると考えている。 付着に関わる糖鎖の特定について、活性物質の精製が完了していないので、レクチンの阻害実験をまだ開始していないが、計画では付着誘起物質の精製の進展状況によって2020年度でも実施すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
付着誘起物質の精製について順調に進んでいるので、2020年度も実験の当初の計画に沿って実施する。付着に関わる糖鎖の特定及び幼生側の糖鎖の認識部位の特定について、レクチンによる付着物質に対する阻害実験を2020年度より開始し、結果に基づいて蛍光発色結合レクチンを用いて幼生側の糖鎖認識部位の染色実験を実施予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、物品費として購入した一部の消耗品の価格変動があったため、結果として2019年度の使用計画より差額が生じた。次年度にカキ成体の飼育関連消耗品の購入に充てるなど、物品費として使用予定である。
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