2020 Fiscal Year Research-status Report
同種貝殻由来のマガキ幼生付着誘起物質の探索に関する研究
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19K06189
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
サトイト シリルグレンペレズ 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (40363478)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 朝美 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (80589870)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マガキ幼生の付着誘起物質 / 同種貝殻のEDTA抽出物 |
Outline of Annual Research Achievements |
マガキは、浮遊幼生が付着時期を迎えると適切な基盤上に付着して成体へと成長する。幼生の付着は同種異個体からのケミカルシグナルが関与するとされているが、その付着誘起物質は未だ不明である。本研究では、本種幼生の付着メカニズムを解明するための一環として、本種貝殻由来の付着誘起物質の特定を目的としている。 該当年度では、本種貝殻より得たEDTA抽出物を限外濾過による分画後活性を調べた結果、>50k画分に高い付着誘起活性が得られた。ゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex 200HR)を用いて>50k画分を精製した結果、771~2,293 kDaの画分が高い活性を示した。さらにグリコペプチダーゼFを用いて771~2,293 kDa画分を糖鎖除去処理した結果、46、51、>250kDaに3つの断片バンドが得られたが、SDSにおけるタンパク質プロフィールは糖鎖除去処理前のプロフィールとほぼ変わらなかったことから、推定の付着誘起物質はO結合型糖鎖を多量に含んでいるためグリコペプチダーゼF がN結合型糖鎖との反応を妨害した感応性が示唆された。今後、SDS-PAGEで確認された3つのバンドのそれぞれの活性を確認するとともに、MALDI-QIT-TOFMSで付着誘起物質を同定する予定である。 一方、幼生をGlcNAc、Neu5Ac、Lactoseで前処理すると、貝殻由来のEDTA抽出物が失活し、幼生の付着に付着誘起物質の糖鎖部位の関与が示唆された。また、幼生はFITC-WGA染色によって面盤、足及び外套膜にレクチン様受容体を有することが確認されるとともに、内因性リガンドが同組織に共存することも示唆された。これらの結果は、国際学術雑誌(Int. J. Mol. Sci. 2021, 22(6), 3273; https://doi.org/10.3390/ijms22063273)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マガキ由来の付着誘起物質の精製について、限外濾過より得た>50k画分をゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex 200HR)を用いて精製し、得られた画分の活性を調べた結果、771~2,293 kDaの画分が高い活性を示した。771~2,293 kDaの画分は、SDS-PAGEにおいて出現したバンドのうち>250kDaをエドマン分解(プロテインシーケンサー、PPSQ-33A)よりアミノ酸配列を分析したが、n末端がブロックされたため、サンプルに含まれる何らかの化合物(Stains All染色)がシーケンシングプロセスを阻害したと考えられ、今後は染色したゲルではなく、溶液サンプルをエドマン分解よりアミノ酸配列を分析する予定である。また、>250kDa画分の質量分析も行ったが、タンパク質が大きく定量・特性を明らかにできなかったので、現在サンプルの酵素消化等の処理を進めて得られたサンプルの質量分析を行う。 幼生の付着に関わる糖鎖及び糖鎖認識部位の特定について、GlcNAc、Neu5Ac、Lactoseが幼生の貝殻由来付着誘起物質への付着を阻害し、幼生の面盤、足及び外套膜にレクチン様受容体を有することも明らかにした。さらに、幼生の化学受容体に内因性リガンドが共存することも示唆された。これらの結果は、国際学術雑誌(Int. J. Mol. Sci. 2021, 22(6), 3273; https://doi.org/10.3390/ijms22063273)に発表したので、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
付着誘起物質の精製・特性の解明について、おおむね順調に進んでいるので、実験当初の計画に沿って実施する。昨年度より実施していた>250kDaタンパク質のアミノ酸配列について、n末端がブロックされた原因を検討し、最終的にアミノ酸配列を分析する。また、付着誘起物質の定量・特性の解明について、付着誘起物質に種々の処理(酵素消化の処理など)を施し質量分析し、最終的に付着誘起物質の同定を目指す。 一方、幼生の付着への糖の関与及び幼生側の糖の認識部位が解明できたが、付着誘起物質の糖鎖部位の特定も行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、発表・参加を予定していた国際学会が2021年10月に延期になったことと、投稿論文が2020年度末に受理され投稿費請求が次年度になったため、結果として2020年度の使用計画より差額が生じた。次年度に「その他」の論文投稿費に使用予定である。
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