2019 Fiscal Year Research-status Report
有機態リン再生過程とリン酸-酸素安定同位体解析に基づくリン循環の解明
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19K06196
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
池谷 透 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (70361590)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 昇 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (30380281)
伴 修平 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50238234)
石田 卓也 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (70759571)
丸尾 雅啓 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (80275156)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有機態リン / 酸素安定同位体 / リン酸エステラーゼ / 蛍光性エステラーゼ基質 / イオンクロマトグラフィー / 微生物メタゲノム / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年以来進めてきた内湖の現場水中のリンの存在形態、粒状態有機元素・微生物群集組成、アルカリフォスファターゼ活性、リン酸酸素安定同位体比の変化について得られた結果の集約を進めている。 Droop型栄養制限モデルから、内湖の滞留時間はプランクトン群集組成や栄養制限状態に強い影響を与えることが想定されるが、集水域からの流入量や降水・蒸発量をもとに滞留時間を見積もったところ、水田の排水量が灌漑期・非灌漑期で大きく変化し、滞留時間の一義的な変動要因であることが明らかになった。調査では、滞留時間が4~62日の分析試料を採取することができた。これらについて、プランクトンの元素組成に反映される栄養制限状態を確認したところ、上流側と下流側の2つの内湖の「粒状態炭素-リン比」・「粒状態窒素-リン比」、共に、滞留時間が長くなるとリン制限が強くなる関係が四季を通じて見られた。各成分やアルカリフォスファターゼ活性が時系列変動やリン制限強度に対してどのように変動するかについて検討することが可能になった。さらに、プランクトン組成との関係の解析を進めるために、藻類の計数データと定量MiSeqによる16S rRNAアンプリコンのバクテリア群集のメタゲノム解析データセットの構築を行った。 今後入手予定のプランクトン群集の増殖状態指標や有機態リン濃度と併せ、微生物群動態とリンの生物学的循環の有機態リンの存在量の時間的・空間的変動を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査を終了し、必要な分析試料の入手を完了した。湖水の無機リン酸のリン酸酸素安定同位体比については、春・夏・秋・冬の代表的測定値が得られた。可分解性有機態リンの動態解析はイオンクロマトグラフィーの分析条件を確認のうえ、今後、進める予定である。プランクトン組成の検討を進めるための計数データならびにメタゲノム解析データは全ての試料が解析の準備が整った。増殖状態の指標として用いるrRNAの測定のためのRT-qPCRについては、測定の最適化の検討が必要なものの、予備実験結果が順調に得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
有機態リンの分解によるリン循環速度とその変動要因を明らかにするために、一義的な重要度をもつと考えられるアルカリフォスファターゼなどのエステラーゼ基質濃度の測定を行う。今後、実施予定のRT-qPCRによるバクテリア群集の増殖状態指標と合わせて検討を行い、リン制限とプランクトン群集組成・増殖状態がアルカリフォスファターゼ活性やリン酸酸素安定同位体比の変化とどのような関係にあるのかについて検討を進める。有機態リンについては、多様な分子種が分解作用を受け、プランクトン群集に利用されると考えられる。イオンクロマトグラフィーの溶出ピークの性状や動態の解析を継続する。さらに、こうした分解過程が、再生過程を経て湖水の無機リン酸のリン酸酸素安定同位体比にどのような影響を与えるのか検討を進める。
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Causes of Carryover |
予定していた物品の購入が在庫で賄え、また、陸水学会への参加を見送ったため当該年度分の繰り越しをした。次年度に分析を補助する技術補佐パートタイムを雇用して研究の進捗を図る経費に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)