2020 Fiscal Year Research-status Report
Role of NPR1 gene in regulating Susabi-nori (Porphyra yezoensis) immunity
Project/Area Number |
19K06231
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
安池 元重 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(横浜), グループ長 (20604820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 洋平 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(横浜), 主任研究員 (40565561)
中村 洋路 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(横浜), 主任研究員 (90463182)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ノリ養殖 / 生体防御 / あかぐされ病 / ゲノム編集 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ノリの生体防御機構を制御する最重要候補遺伝子として、近年申請者らが同定したスサビノリのNPR1(nonexpressor of pathogenesis-related genes 1)遺伝子に着目し、その遺伝子破壊株を作製することでNPR1がどのようにして病原体に対するスサビノリの抵抗性獲得に関与しているのかについての解明を進めている。昨年度までに、ゲノム編集(CRISPR-Cas9システム)によりNPR1遺伝子のコード領域を切断するための標的塩基配列(20塩基)候補について、in vitroの試験を行い5つの標的配列に絞り込んだ。 今年度は実際に、それら5つの標的塩基配列に相補的な一本鎖ガイドRNA(sgRNA)を人工合成し、それらsgRNAとDNA 切断酵素Cas9 タンパク質の複合体を調製し、電気穿孔法(エレクトロポーレーション法)によりノリのプロトプラストに導入した。そして、それらプロトプラストを葉状体にまで培養した後、DNAを抽出し、次世代シーケンサーによる全ゲノム解読を行うことで実際に標的遺伝子が切断されてNPR1遺伝子が欠損した株が作出できたかどうか調べた。その結果、1つの培養株で約300塩基も欠損している株が見つかり、NPR1遺伝子欠損株の作出に成功した。さらに、作出した欠損株と対象株にサリチル酸(植物の生体防御のシグナル伝達物質)あるいはキチン(ノリ病原体の細胞壁構成成分)を添加し、網羅的な遺伝子発現解析を行い、NPR1の破壊により影響を受ける遺伝子群を探索した。その結果、サリチル酸に添加より362個、キチン添加により268個の影響を受ける遺伝子候補を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、実際にNPR1遺伝子欠損株の作出に成功し、NPR1遺伝子がノリの生体防御機構の構築に果たす役割について分子レベルで解析するための材料が整った。さらに、トランスクリプトーム解析を行い、NPR1の破壊により影響を受ける遺伝子候補を数百個同定し、NPR1が関与するパスウェイ・分子ネットワークを推定するための手がかりを得ることができた。以上の成果より、本課題は計画予定通りに進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)NPR1が関与するパスウェイ・分子ネットワークの推定:今年度同定したNPR1の破壊により影響を受ける遺伝子候補(サリチル酸に添加より362個、キチン添加により268個)を精査し、NPR1が関与するパスウェイ・分子ネットワークを推定する。 2)NPR1が直接的な防御因子であるキチナーゼやβグルコシダーゼの活性に影響を及ぼしているのか?についての検証:サリチル酸で刺激した欠損株と対照株のホモジュネートを用いて、キチナーゼおよびβグルコシダーゼ活性を測定し、比較する。さらに、それらホモジュネートの抗菌活性に違いが見られるのかについて、平板培養法を用いた、あかぐされ菌の生育阻害試験により調べる。 3)実際にNPR1機能欠損株が病原体に対して弱くなるかの確認:欠損株と対照株の葉体からの葉体ディスクを打ち抜き、そのディスクに、あかぐされ菌を感染させ、1日培養した後、光学顕微鏡で感染箇所数および感染細胞数を計数し、あかぐされ菌の感染度合いを比較する。
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Causes of Carryover |
世界規模での新型コロナウイルス感染症の影響により、コロナウイルスの検査や研究においても使用される分子生物学実験に使われる試薬や物品が、年度内に納品されない事態が生じた。次年度は、納期が見込める同等品を探し、できるかぎり早く発注をかけるようにする。
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