2019 Fiscal Year Research-status Report
入会林野に由来する多数記名共有林の森林管理上の課題と政策の検討
Project/Area Number |
19K06280
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
山下 詠子 東京農業大学, 地域環境科学部, 助教 (10733561)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 入会林野 / 記名共有林 / 登記 / 入会権 / 森林管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、数十名から百名以上の多数人による共有名義で登記された記名共有林の現状を把握し、その特徴と森林管理上の課題を整理することを目的としている。このような森林の多くは集落等の地域住民の共有財産として管理・利用されてきた入会林野に由来しており、全国各地に多数存在する。しかし、明治時代に登記されて以来、相続登記が一度もなされずに放置されていることが多く、所有者不明土地問題の観点からも課題が多い。そこで、記名共有林の現状把握に加えて、近年整備されてきている記名共有林に対する政策的措置の実施状況を把握し、現場での解決策および政策的課題を提示することを目指す。 令和元年度は、東京都青梅市、埼玉県秩父市、長野県、広島県において記名共有林の現地調査を行った。調査事例の中には、共有名義という登記形態が、登記名義人や法定相続人の共有物であるという認識を生み出し、入会集団が権利者を把握しきれていない実態も見られた。従来は、入会権を持つ入会集団自身が権利者を明確に把握し、森林管理に際しても集団的に対応してきた。しかし、森林の価値の低下や権利者の関心の薄れによって集団の規範が変容し、入会集団が自身の統制を取れなくなっているといえる。このような実態を受けて入会権のあり方も見直す必要がある。 また、平成31年4月に始まった森林経営管理制度の実施状況および同制度と記名共有林との関係性について、神奈川県、埼玉県、長野県において調査を行った。同制度は始まったばかりのため、今後の動向を引き続き把握する必要があるが、現時点では記名共有林に対して積極的な位置づけは与えられていないようであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記名共有林に関わる現地調査については、各県の担当者からの協力を得て、おおむね予定通りに実施している。また、関連する学会や研究会において本研究のテーマに関わる報告をし、他の研究者と意見交換を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、記名共有林に関わる調査を実施する予定だが、COVID-19の感染拡大を受けて現地調査の実施方法については慎重に判断する。現地に赴かずに遠隔で調査することに加え、過去の統計資料や史資料等を最大限に活用した研究への展開も視野に入れる。 また、2年目に入る森林経営管理制度の実施状況に加えて、2019年に制定された表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律も、記名共有林に大きく関わることから、これらの法制度がどのように現場で実施されているかを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた調査地よりも近い場所に調査地が変更になり、次年度使用額が生じた。これについては翌年度分と合わせて、文献資料の購入に充てる予定である。
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