腸内細菌叢を利用したブタの飼料要求率における新しい育種手法の開発

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K06349
• Research Institution: Tohoku University
• Principal Investigator: 上本 吉伸 東北大学, 農学研究科, 准教授 (50606837)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 腸内細菌叢 / 遺伝率 / 遺伝相関 / ブタ

Outline of Annual Research Achievements

飼料利用性形質と産肉形質との間の遺伝的関係について明らかにしてきた。表現型値を持つデュロック種約2000頭について、遺伝的パラメーターの推定を行った。その結果、飼料利用性形質である飼料要求率（FCR）と一日平均増体重（DG）は負の中程度の遺伝相関（-0.38）であり、他の産肉形質とは無相関であった。一方、飼料利用性形質である余剰飼料摂取量（RFI）と背脂肪厚（BF）との間に強い正の遺伝相関（0.58）、余剰増体重（RG）とDGとの間に強い正の遺伝相関（0.89）が推定された。RFIおよびRGはFCRと強い望ましい遺伝相関（絶対値で約0.7）であったことから、DGを増やしBFを減らす改良を行うことで、FCRの改良が可能であることが示唆された。
腸内細菌叢解析について、デュロック種豚について肥育後期の糞便をサンプリングし、16S rRNA解析を行う。得られた菌叢の存在量から、菌叢の遺伝性や、菌叢構成比とFCRとの関係について調査する。2019、2020年度は、豚コレラおよび新型コロナウィルスの影響で対象農場でのサンプリングが十分に実施できなかった。そのため、FCRの記録を有する94頭について、糞便サンプルから細菌DNAを抽出し、16S rRNA解析を実施した。得られた菌叢について、属レベルの分類解析を行い、存在量の多い97属を遺伝解析に用いた。各属の相対量に関する遺伝率を推定した結果、多くの属で解析結果が収束しなかった。菌叢構成比がFCRに与える影響について推定した結果、解析結果が収束しなかった。しかしながら、FCRと強い遺伝相関をもつBFで同様に行ったところ、菌叢構成比が表型分散に与える寄与率が34%となった。そのため、頭数の増加による検討が実施できれば、腸内細菌叢の育種への応用が期待される結果となった。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

飼料利用性に関する遺伝的影響の調査については、データの編集および統計解析を実施し、得られた結果については国際誌に原著論文として投稿した。一方、糞便サンプリングについては豚コレラおよびコロナ等の影響で、対象農場でのサンプリングが十分に実施できていない。本研究では約500頭を用いる予定であるが、現段階で約400頭の糞便サンプルが得られ、16S rRNA解析を実施したのはそのうち約100頭である。そのため、残り約100頭について引き続きサンプリングを行うとともに、得られた約400頭について16S rRNA解析を実施予定である。菌叢データを用いた統計解析については、2020年度に約100頭を用いて実施することで統計解析手法の確立を行ったことから、菌叢データが得られ次第すぐに統計解析可能である。以上より、サンプル収集が当初計画に比べて未達成であることから、計画より少し遅れていると判断している。

Strategy for Future Research Activity

必要個体のうち、残り約100頭の糞便サンプリングを2021年度に行い、得られ次第、16S rRNA遺伝子可変領域の遺伝子配列を次世代シークエンサーによって解読する予定である。また、得られた菌叢データを用いて、2020年度に確立した統計解析を実施し、腸内細菌叢を利用したブタの育種手法の開発を行う。

Causes of Carryover

2019、2020年度は、豚コレラおよび新型コロナウィルスの影響で対象農場での糞便のサンプリングが十分に実施できなかったことから、16S rRNA解析を委託するための予算を執行できなかった。そのため、2021年度も引き続きサンプリングを行うことから、腸内細菌叢解析に関する消耗品および専門業者への委託費については、次年度に繰り越す必要があった。
2021年度は、主に腸内細菌叢解析のための専門業者への委託費を予定している。