2021 Fiscal Year Annual Research Report
メタボローム解析による昆虫体内フィラリア感染幼虫の効率的検出法の開発とその応用
Project/Area Number |
19K06421
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
福田 昌子 大分大学, 医学部, 助教 (00156788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 靖 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 准教授 (00244161)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メタボローム解析 / 人獣共通フィラリア症 / 吸血性昆虫 / ブユ / オンコセルカ / 感染幼虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
人獣共通オンコセルカ(フィラリア)症の伝播サイクルを解明するには、媒介者である吸血性昆虫の決定が不可欠である。本研究では、生体中の代謝産物を測定するメタボローム解析により、昆虫内のフィラリア第3期幼虫(感染幼虫)を、形態観察に頼らずに効率的に検出する新しい媒介者検索法を開発することを目的としている。 令和3年度は、令和元年度から行っている感染実験とメタボローム解析を拡大させた。蛹から羽化させた吸血性昆虫ブユ成虫に、イノシシから採取したOnchocerca dewittei japonica(日本の人獣共通オンコセルカ症起因種、以下O. d. j. という)のミクロフィラリアを注入し、ブユを飼育して経時的に解剖してミクロフィラリア、第1期幼虫、第2期幼虫および第3期幼虫を得た。各幼虫の代謝物成分をトリプル四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。得られたデータを多変量解析した結果、ブユ体内で発育した4つのステージの幼虫を区別することができた。 また、本法を実用化する前段階として、ブユの吸血被害が知られる鹿児島県奄美大島でのブユのフィラリアの媒介状況を調査した。採集されたブユを解剖し、吸血個体から得られた血液をDNA解析した結果、アシマダラブユからブタ・イノシシとオンコセルカ属フィラリアのDNAを検出した。ブユから直接フィラリア感染幼虫は検出されなかったが、アシマダラブユがブタまたはイノシシに寄生しているオンコセルカを媒介している可能性があることが示唆された。 現在、野外で採集したブユからメタボローム解析でO. d. j. 感染幼虫を実際に検出できるか解析中である。もしできれば、作業の煩雑な形態観察による同定に頼らずに感染幼虫を検出することができるようになり、人獣共通フィラリア症の伝播サイクルの解明や発生の予測が容易になる。
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