2019 Fiscal Year Research-status Report
植物におけるリボソームストレスの感知とその情報伝達機構の解析
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19K06714
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
堀口 吾朗 立教大学, 理学部, 教授 (70342847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 皓之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30783865)
前川 修吾 立教大学, 理学部, 助教 (80711209)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リボソーム / リボソームストレス応答 / ユビキチンリガーゼ / シロイヌナズナ / NAC型転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物はリボソーム生合成異常を監視しそれに対処するためのリボソームストレス応答機構を備えている。我々はシロイヌナズナをモデルに植物のリボソームストレス応答に関わる因子を同定している。RINGタンパク質の一種であるSZK2およびリボソームタンパク質のRPL12の下流にSZK1をはじめとした4種のNAC型転写因子を位置付けている。本研究では、「異常型リボソームタンパク質の存在下では、RPL12によってSZK2が活性化され、下流のNAC型転写因子を活性化することでリボソームストレス応答が誘導される」という仮説を立て、その検証を進めている。 本年度、SZK2とRPL12Bの機能解析にある程度の進展が見られた。RINGドメインを持つタンパク質はユビキチンリガーゼとして働く場合が多い。In vitroユビキチン化アッセイからSZK2の自己ユビキチン可能が検出された。イースト2ハイブリッド法と共免疫沈降法からはSZK2とRPL12Bの相互作用が検出された。既知のアミノ酸置換型RPL12B変異タンパク質は、SZK2との相互作用能を失っていた。また、タバコ葉での共発現、野生型およびT-DNA挿入を持つszk2-2変異株の細胞抽出物を用いた実験から、RPL12BはSZK2依存的に不安定化することを見出した。興味深いことにSZK2には2種のスプライスバリアントが存在し、そのうちの片方のみがRPL12Bを不安定化した。 上記の実験と並行して、as2 rpl4dおよびas2 rpl4d szk2のサプレッサー変異株の変異部位の同定を進めた。前者のサプレッサーはリボソームストレス応答が誘導できない変異株、後者はリボソームストレス応答誘導能が回復した変異株である。合計10系統のリシーケンスを行い、szk1やszk2の新規アリルに加え、数種の新規変異遺伝子候補を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SZK2およびRPL12Bがリボソームストレス応答に果たす役割の解析は、概ね順調に進んでいる。RPL12Bが SZK2によって不安定化する結果は予想外であるが、これは必ずしも当初の仮説を否定しない。今後得られる結果に応じて、仮説を柔軟に修正していきたい。また、遺伝学的な手法でリボソームストレス応答関連因子を探索する試みも順調なスタートを切ることができた。本年度は10系統のみの解析だったが、次年度以降はこの数を増やしていく。as2 rpl4d szkのサプレッサー変異からは、szk2の新規アリルが見出されており、これらはSZK2の分子機能の解剖に役立てられる。また、as2 rpl4d szk2サプレッサーの新規変異遺伝子候補からはSZK2の相互作用因子が新たに見出されることを期待したい。 SZK2のユビキチン化標的を含め、相互作用因子の探索には共免疫沈降物のMS解析が有効である。p35S::SZK2-GFPでas2 rpl4d szk2を形質転換したところ、相補能が強い系統は得られていない。一方、SZK2のゲノム断片では問題なく相補されることから、GFP融合の仕方はプロモーターなどをうまく選定して、MS解析用の系統を作出する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、SZK2とRPL12Bの相互作用解析を進める。特に重要な点として、SZK2は直接RPL12Bと相互作用して、これをユビキチン化することにより不安定化しているのかを確認することがあげられる。また、これまでの実験はリボソームストレス非存在下で行っているため、リボソームストレス誘導条件でのSZK2とRPL12Bとの相互作用の解析を進める必要がある。RPL12Bはリボソームタンパク質であるため、SZK2がリボソームに結合したRPL12Bか遊離状態のものと結合するのかの解析も、今後重要になると考えている。 一方、as2 rpl4dのサプレッサー、as2 rpl4d szk2のサプレッサーは多数の系統があるため、本年度はまず10系統のみリシーケンスを行った。新規変異遺伝子候補が見出されたことから、残りの系統についても出来るだけ多くリシーケンス解析を行い、SZK2やRPL12Bと共に働く因子の同定につなげていきたい。
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Causes of Carryover |
研究分担者である前川が共免疫沈降とMS解析のための予備実験を行う予定であるが、材料となる植物体の不具合のためこれを保留している。また、堀口、前川分については新型コロナウイルス対策のため、年度末に研究活動が制限されることが予想されたため、消耗品などの購入を控えた。次年度は、植物の系統維持など最低限の活動は行うと共に、新型コロナウイルス対策による研究活動の制限が緩和、解除された後速やかに予定されていた実験を進めるため、繰越分の予算を執行したい。
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Research Products
(7 results)