2020 Fiscal Year Research-status Report
Analyses on the reproductive isolation machanism(s) in Sargassum horneri
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19K06807
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上井 進也 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 教授 (00437500)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 季節集団 / 光周性 / 交雑個体 / 室内培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度に引き続き令和2年度も、実験室内で交配を行い、親株の光周性が判明している培養株を中心にマイクロサテライト8マーカーにもとづく遺伝的解析を行い、遺伝的グループを明らかにした上で、成熟に関わる光周性の解明を行なった。とくに春集団由来の株の交配によって得られた、遺伝的解析においても春集団に所属することが確認できている3株を中心に光周性の解明を実施した。これら3株については、雌親は同一であるものの、雄株が異なっている。2株については、リセプタクル形成に13時間/日以上の明期を必要としたのに対し、1株のみは、実験期間を3ヶ月に伸ばしたところ、11時間/日明期条件下でもリセプタクルを形成するものの、リセプタクル内部に卵の形成が観察されないという結果が得られた。この結果が、別地点に由来する個体間の交雑の結果、遺伝的原因によって引き起こされたものか、室内培養のあーティファクトなのかについては、今後検証の必要がある。しかしながら、これらの結果から本課題で用いている遺伝的判別で「春集団」としているものの光周性に多型が存在している可能性が示された。また、交配実験と、交配実験から得られた季節集団間の交雑株の光周性の結果について、野外の季節集団間の遺伝的分化のデータとあわせて、本課題で対象としている季節性の多型が、生殖隔離に働いている可能性をしめした論文をMarine Ecology Progress Series誌(Homma et al. 2020)に発表した。 2020年度については、コロナウイルスの影響で一度もサンプリングを実施することが適わなかった。2021年度についても状況が改善することは期待できないため、代表者が居住する兵庫県沿岸のアカモク季節集団を用いて、遺伝的所属と光周性の対応、および両集団の交配可能性について検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究室で維持している株については、反復実験でも概ね矛盾しない結果がえられており、光周性が概ね理解できたと考えている。しかしながら多様性の把握という観点からは株(個体)数が不足している。この点については、2019年から2021年の冬から春にかけてサンプリングを行い、追加の培養株を得ることで解決する予定であった。しかしながらコロナ禍が想像以上に長期化し、2020年度については、サンプリングを実施できなかった。結果として、受精率の比較も、培養株の新規確立も実施できていないため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の推移については今後も不透明であり、春型・冬型の個体が同所的に分布する新潟県沿岸におけるサンプリングの見通しが立たないのが現状である。幸い、アカモクの季節集団は瀬戸内海沿岸にも分布しているため、2021年度については、兵庫県沿岸に分布する季節集団(アカモクおよびシダモク)を用いて、遺伝的分化の解析と培養実験を進め、季節集団間での生殖隔離機構の実態解明を進める計画である。
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Causes of Carryover |
多様性を把握するために計画していた培養株の確立と、野外からの採集個体を用いて受精率の比較を計画していたのが、そのために予定していたサンプリングを、コロナウイルス感染症対策のため中止したことが原因で次年度使用が生じた。今後もサンプリングを実施できるかどうかは不透明であるため、兵庫県の季節集団を対象として、遺伝的解析と交配実験を行うことを計画している。次年度使用の予算については、遺伝的解析の費用として使用する予定である。
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