2023 Fiscal Year Annual Research Report
100年で進化した高山性の小型化現象の解析―ニュージーランドの帰化植物を用いて―
Project/Area Number |
19K06809
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
篠原 渉 香川大学, 教育学部, 准教授 (30467443)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高山性ミニチュア植物 / 帰化植物 / ニュージーランド / 適応進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブタナ(Hypochoeris radicata)とヒメスイバ(Rumex acetosella)はヨーロッパ原産の多年生草本であり、1800年代中頃にニュージーランドに帰化したことが標本から確認されている(ブタナは1867年、ヒメスイバは1850年)。さらに約100年後の1980年代には両種ともに南島の低地から高地にかけて広く分布しており、高地に進出したブタナとヒメスイバはその葉面積が低地の半分以下になっていることが報告されている。本研究ではニュージーランドの帰化植物であるブタナとヒメスイバの高山の小型化形質がどのような特徴を持つのかを明らかにすることを目的とした。 ニュージーランドのオークランド博物館、ニュージーランド博物館、National Forestry標本庫に収蔵されていたスイバ66点とブタナ122点の標本から、葉・茎・花の各器官のサイズと形を測定した。葉は個体の最大葉の葉面積、葉の形の指標となる葉型指数を計測した。また茎及び花茎は個体の最大長を測定した。花については花の直径及び花弁の面積を測定した。次にこれらの形質について原産地の個体と比較するために、ヨーロッパ各地の標本庫から標本画像を取得し、それぞれの形態形質の測定を行った。その結果、ニュージーランドの形態変異はヨーロッパにある形態変異の中に完全に埋没した。つまりニュージーランドで見られた形態変異はすでにヨーロッパに存在しており、ヨーロッパからニュージーランドへの複数回の移入により、大きな形態変異を示すようになったと考えられる。
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